Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 甲状腺
甲状腺その他

(S752)

初診から2年の経過で出現した甲状腺乳頭癌2例

Two cases with papillary thyroid cancer which ocurred in two years

川真田 明子, 的場 由佳子, 鈴木 留美, 飯原 雅季

Akiko KAWAMATA, Yukako MATOBA, Rumi SUZUKI, Masatosi IIHARA

1南池袋パークサイドクリニック内分泌・甲状腺外科, 2南池袋パークサイドクリニック超音波検査室

1Thyroid Surgery, Minami-ikebukuro Parkside Thyroid Clinic, 2Clinical Sonographer, Minami-ikebukuro Parkside Thyroid clinic

キーワード :

【はじめに】
甲状腺乳頭癌は進行が緩徐で予後良好であり,近年では1cm以下の微小甲状腺乳頭癌については経過観察の方針の提示もされている.患者にとっての利益より害が上回る外科治療を避けるというのは大切な考えであるが,それにはきちんと対応すべき症例を判断する事が重要となる.その判断には超音波検査が不可欠であり,今回,初診時の超音波検査で異常なかったが,わずか2年後の超音波検査にて甲状腺乳頭癌の所見を認めた症例を経験したので報告する.
【症例1】
46歳,女性.2年前に当院初診.感染症状があり受診した近医で行った血液検査にてTSH 4.412 μIU/mlであり,精査目的に受診.当院血液検査では甲状腺機能は正常,自己抗体陰性.同時に施行した頸部超音波検査は,腫瘤性病変なく正常であった.今回,肺癌検診のCT検査で甲状腺腫瘍を指摘され受診.超音波検査にて甲状腺右葉に6mmの不整形,境界不明瞭な腫瘍を認めた.細胞診クラスIVにて甲状腺乳頭癌の診断となった.
甲状腺乳頭癌T1aN0M0 stageIに対して甲状腺右葉峡切除,右D1郭清を施行.
病理診断は甲状腺乳頭癌9mm,前頸筋への浸潤あり,リンパ節転移n=0/11(pT3Ex1pN0)であった.
【症例2】
30歳,女性.2年前に当院初診.婦人科で行われた血液検査にてTSH 0.022μIU/ml であり,精査目的に受診.当院血液検査では甲状腺機能は正常,自己抗体陽性で橋本病の診断.同時に施行した頸部超音波検査では腫瘤性病変は認めなかった.今回2年ぶりの超音波検査にて甲状腺左葉に13mmの不整形,境界不明瞭な腫瘍を認めた.細胞診クラスVにて甲状腺乳頭癌の診断となった.
甲状腺乳頭癌T1bN0M0 stgeIに対して甲状腺左葉峡切除,左D1郭清を施行.
病理診断は甲状腺乳頭癌follicular variant 12mm,前頸筋への浸潤あり,リンパ節転移n=6/12(pT3Ex1pN1a)であった.
【考察】
甲状腺乳頭癌の治療に於いては,患者にとっての治療利益と手術による害の両面から判断する必要がある.今回経験した症例では,2年の経過で1cm前後のはっきりとした甲状腺乳頭癌が出現しており,この時点で診断・治療に至ったことは患者にとって利益であったと考える.甲状腺機能異常で通院している患者に対して,年に1回程度を目安に定期的な超音波検査を行い腫瘍を発見したり病状を認識することの重要性を再認識した.