Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 甲状腺
甲状腺その他

(S751)

甲状腺低分化癌の超音波所見

Ultrasonographic Features of Poorly Differentiated Thyroid Carcinoma

藪田 智範, 國井 葉, 北川 亘, 伊藤 公一

Tomonori YABUTA, You KUNII, Wataru KITAGAWA, Kouichi ITO

1伊藤病院外科, 2伊藤病院内科

1Surgery, Ito Hospital, 2Internal Medicine, Ito Hospital

キーワード :

【目的】
甲状腺低分化癌は甲状腺癌取扱い規約によると,「高分化癌(乳頭癌ないし濾胞癌)と未分化癌との中間的な形態像および生物学的態度を示す濾胞上皮由来の悪性腫瘍」と定義されている.その病理学的特徴は,充実性solid,索状trabecular,島状insularの増殖パターン(低分化成分poorly differentiated component)を認めることであり,低分化成分が腫瘍の50%以上を占める場合に低分化癌と診断される.低分化癌はまれな腫瘍であり,画像診断についての報告は少ない.特に質的診断に最も有用な超音波検査でも,低分化癌の特徴的な所見を見出すには至っていない.そこで当院で経験した低分化癌について,その超音波所見の特徴を検討した.
【対象と方法】
2013年1月から2017年12月までの低分化癌手術症例30例の超音波所見を後ろ向きに検討した.
【結果】
超音波所見の特徴は,形状不整が90%,境界不明瞭が66%を占め,内部性状は低エコーが80%,不均質が96%であり,悪性を示唆する所見が多かった.内部に卵殻状の高エコーを認める症例が40%に認め,未分化癌に類似した超音波像を呈することもあった.一方,それぞれの症例を超音波所見に基づいて質的診断を行うと,腺腫様結節(20%),濾胞性腫瘍(20%),乳頭癌(20%),濾胞癌(17%)と診断されることが多く,良性結節や分化癌との鑑別が困難であることが分かった.悪性が疑われるが組織型推定が困難な像を呈する低分化癌も存在した.
【まとめ】
低分化癌の超音波像は多彩であり,診断は容易ではない.低分化癌に特徴的な所見は見出すことはできなかったが,悪性所見を呈し浸潤傾向を示す大きな腫瘤に低分化癌が隠れていると考えるのが妥当であろう.また,卵殻状高エコーの周辺に拡大する低エコー像は未分化癌を想像させるが,未分化癌ほどの高度の浸潤所見を呈さない超音波所見の場合は低分化癌も考慮すべきである.これらの所見は,未分化転化の前段階である可能性も考えられる.一方で,良性結節や分化癌に類似した低分化癌が多く,低分化癌を超音波検査のみで診断するのはきわめて困難であると思われた.