北川 亘, 天野 高志, 佐々木 栄司, 近藤 哲夫, 長浜 充ニ, 杉野 公則, 伊藤 公一

Wataru KITAGAWA, Takashi AMANO, Eiji SASAKI, Tetuo KONDO, Mitsuji NAGAHAMA, Kiminori SUGINO, Koichi ITO

¹伊藤病院外科, ²伊藤病院診療技術部臨床検査室, ³山梨大学医学部人体病理学

¹Department of Surgery, Ito Hospital, ²Department of Medical technology, Ito Hospital, ³Department of Human Pathology, University of Yamanashi

キーワード :

【目的】
WHO腫瘍分類の第4版（2017）にこれまで分類になかった境界病変としてNIFTP（Non-Invasive Follicular Thyroid neoplasm with Papillary-like nuclear feature）が設定された．当院で経験したNIFTP症例の超音波像に関して報告する．
【対象】
2006年1月から2012年12月までに初回手術を施行し，病理組織診断で濾胞型乳頭癌と診断された症例を再度見直し，NIFTPと診断された17例．男性 2例，女性 15例，年齢の中央値は60才（28-77才）．NIFTPと診断された症例の超音波検査所見を後ろ向きに検討した．超音波診断は甲状腺結節超音波診断基準（日本超音波医学会用語・診断基準委員会）に準拠した．
【結果】
同時期に初回手術した乳頭癌 5816例中，濾胞型乳頭癌は152例（2.6％）で，このうち病理診断の見直しでNIFTPと診断されたものは17例（乳頭癌中の0.3％，濾胞型乳頭癌中の11.2％）であった．甲状腺結節超音波診断基準の主所見では形状整 14例（82.4％），不整 3例（17.6％），境界明瞭平滑 14例（82.4％），不明瞭粗雑 3例（17.6％），内部エコーレベルは等 7例（41.2％），等～低 7例（41.2％），低 3例（17.6％），均質性は均質 7例（41.2％），不均質 10例（58.8％）であった．副所見では微細高エコーなし17例（100％），多発 0例（0％），境界部低エコー帯は整 7例（41.2％），不整/なし 10例（58.8％）であった．細胞診は16例に施行され，乳頭癌 9例（56.2％），乳頭癌疑い 2例（12.5％），濾胞性腫瘍 4例（25.0％），意義不明 1例（6.3％）であった．追跡期間 は中央値66ヶ月（1-116ヶ月）で，再発，遠隔転移を認める症例はなかった．
【考察】
超音波検査所見で形状整，境界明瞭平滑，微細高エコーがなく，細胞診で乳頭癌または乳頭癌疑いである腫瘍は，NIFTPの可能性も考慮する必要があると考えられた．NIFTPの実臨床での取り扱いは今後の課題である．