Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 甲状腺
甲状腺

(S748)

甲状腺結節の診断におけるエラストグラフィの有用性

Usefulness of elastography for diagnosing the thyroid nodules

福原 隆宏, 松田 枝里子, 堂西 亮平, 小川 絢女, 竹内 裕美

Takahiro FUKUHARA, Eriko MATSUDA, Ryohei DONISHI, Ayame OGAWA, Hiromi TAKEUCHI

1鳥取大学医学部感覚運動医学講座耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野, 2鳥取大学大学院医学系研究科保健学専攻

1Department of Otolaryngology, Head and Neck Surgery, Tottori University, 2School of Health Science, Tottori University

キーワード :

【はじめに】
エラストグラフィは対象臓器の硬さを評価するために2000年代から臨床応用されはじめた新しい技術である.エラストグラフィには現在,大きく分けて2つの手法が存在する.組織の歪み具合を評価するstrain imagingと組織内を伝搬する横波の速度を評価するshear wave imagingである.さらに,strain imagingは用手圧迫を利用するstrain elastographyと,音響圧迫による作用(ARFI)を利用するARFI imagingに分けられ,shear wave imagingは固定のROI中のshear wave speedを均一とみなすpoint shear wave speed measurementと,対象組織の任意点のshear wave speedを測定でき,速度差を色で視覚化する2D shear wave speed imagingに分けられる.
【Strain imaging】
・Strain elastography
初めに臨床導入されたエラストグラフィであり,圧迫をかけた場合の組織の歪み程度によって色分けした画像を作り出す.しかしその画像は圧迫の程度によって刻々と変化するため,主観的に画像を選択する必要がある.235の甲状腺結節(185の良性結節と50の悪性結節)での診断精度の結果は,感度63.2%,特異度66.3%,診断精度は65.6%であった.
・ARFI imaging
音響圧迫による組織の変位量を色分けして画像を作り出す.無数の音波によって対象物が圧迫されるため,比較的細やかな画像評価が可能であり,検者が主観で画像を選ぶ必要がない.一方で,Siemens Healthineersしかこのアプリケーションを持たず,肝臓などの深部では音響圧迫が減衰するため使えない. 235の甲状腺結節(185の良性結節と50の悪性結節)での診断精度の結果は,感度80.0%,特異度86.3%,診断精度は85.0%であった.
【Shear wave imaging】
・Point shear wave speed measurement
固定のROI内部を均一としてshear wave speedを測定し,組織の硬さを数値化して定量評価できる.しかし,ROI内部の組織が不均質である場合,測定不可能となる.またshear waveは速度が遅く,組織境界での影響を受けやすい.112の甲状腺結節の良悪性診断では,ROC曲線のAUC値が0.809であり,cut off値が2.01m/sの時の感度85.7%,特異度62.0%,陽性的中率67.9%,陰性的中率92.9%,診断精度67.9%であった.しかし一方で,良性結節は94%が測定可能であったが,悪性結節は50%が測定不可であった.さらに摘出標本を利用し,生体内のアーチファクトを評価したところ,結節の境界,組織の不均質性や血流が生体内のshear wave speedの測定に影響することが判明した.
・2D shear wave imaging
対象とした組織内の任意の場所でshear wave speedが得られ,それを色分けで可視化したものである.しかし部位によってshear wave speedが大きく違い,その部位のshear wave speedを採用するかなど,課題は多い.さらに表示されるshear wave speedの信頼性においても問題が残る.
【まとめ】
エラストグラフィは各社においてそれぞれ独自のプロトコルを持っており,画一的な評価は難しい.今後,各社のエラストグラフィを比較した検討が必要である.