Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 乳腺
乳腺 4

(S743)

広がり診断に造影超音波検査が有用であった乳癌の1例

A Case of Breast Cancer Contrast-Enhanced Ultrasonography Was Useful for Spreading Diagnosis

安達 慶太, 鈴木 周平, 鈴木 佑奈, 武井 咲月, 窪田 仁美, 小野 容子, 原 由起子, 櫻井 健一

Keita ADACHI, Shuhei SUZUKI, Yuna SUZUKI, Satsuki TAKEI, Hitomi KUBOTA, Yoko ONO, Yukiko HARA, Kenichi SAKURAI

日本大学医学部外科学系乳腺内分泌外科学分野

Breast and Endocrine Surgery, Nihon University School of Medicine

キーワード :

乳癌の術前広がり診断に造影MRI検査が用いられるが,その評価が困難な症例も多い.今回われわれは,乳管内進展が疑われる乳癌の広がり診断に,造影超音波検査が有用であった1例を経験したので報告する.
症例は47歳,女性.左乳房腫瘤を自覚し,当科を受診した.視触診で左乳房A領域に2cm大の硬く可動性不良な腫瘤を触知した.マンモグラフィ検査で左乳房UI領域に淡く不明瞭な集簇性石灰化を伴うspiculated massを認め,カテゴリー5と判定した.乳房超音波検査にて左乳房A領域に27×24×14mmの境界明瞭粗造な不整形低エコー腫瘤と,乳頭側に連続する管状の低エコーを認めた.腫瘤の内部には点状高エコーを有し,豊富なバスキュラリティを示した.乳頭腫瘤間距離は44mmであった.腫瘤に対し針生検を施行し,浸潤性乳管癌(ER+,PgR+,HER2:1+,Ki-67:60%)の診断であった.乳房造影MRI検査では24mm大の造影効果を有する腫瘤を認めたが,乳管内進展の評価は困難であった.造影超音波検査を施行したところ,腫瘤から乳頭側方向約2cmまでの範囲に乳管内の広がりを示唆する造影効果を認めた.乳頭側にやや広い切除範囲を設定し,乳房部分切除術を施行した.術中迅速病理診断の結果,乳頭側断端は陰性であり,断端陰性の切除が可能であった.手術病理組織学的検査にて充実腺管癌優位の浸潤性乳管癌の診断であった.腫瘍の乳頭側方向に乳管内病変の広がりを認めたが,切除断端は陰性であった.
本症例は造影超音波検査による広がり診断により,適切な温存手術を行うことができた.本症例のように造影MRI検査での術前広がり診断が難しい症例において,造影超音波検査は有用である.造影超音波検査における造影範囲と手術検体での乳管内病変の広がりを対比・評価し,症例を蓄積していきたい.