Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 乳腺
乳腺 3

(S742)

乳癌症例における乳房用超音波画像診断装置の有用性の検討

Usefulness of Automated Breast Ultrasound System(ABUS) in breast cancer

川口 暢子, 加藤 克己, 内藤 明広

Nobuko KAWAGUCHI, Katsumi KATOH, Akihiro NAITOH

刈谷豊田総合病院乳腺外科

Department of breast surgery, Kariya Toyota General Hospital

キーワード :

【目的】
乳房用超音波画像診断装置(以下ABUS)の精度管理を目的とし,乳癌症例に対する有用性について検討した.
【対象と方法】
2017年3月から2017年12月までの原発性乳癌症例50例,55乳房を対象とした.組織型内訳は,乳頭腺管癌 17例,充実腺管癌 4例,硬癌 19例, 粘液癌 3例,浸潤性小葉癌 3例,非浸潤性乳管癌 9例であった.いずれも同意を得た上で,術前マーキング時に①日立アロカ製,ハンドヘルド超音波装置(以下HHUS)と②GE社製 Invenia ABUSの両方を用いて検査を施行した.どちらも仰臥位,手術時の体位を推定し患側上肢は90度拳上で行った.カテゴリー,腫瘍径,サブタイプなどと比較検討した.
【結果】
病変が認識できれは,ABUSは乳頭からの距離や病変が複数存在するものの位置関係が把握しやすかったが,個々の病変ではすべての症例において,画質が良いHHUSの方が病変の存在診断が容易で,辺縁の評価,カテゴリー判定が容易であった.カテゴリーがHHUSとABUSで変化しなかったものは27例,HHUSよりもBUSが1または2段階カテゴリー低下したものは,28例あった.ABUSでもカテゴリーが変化しないものは明らかな前方境界線の断裂があったり,明らかに構築の乱れを呈する硬癌や小葉癌などの組織型であった.カテゴリーが低下した症例は,腫瘍の辺縁が明確でなく低エコー域としてしか認識できない,またはD/W比が低く,明らかな前方境界線の断裂がなく,周囲に構築の乱れもないもので,中には嚢胞疑い(カテゴリー2)と診断される可能性もあった.
【結語】
乳癌症例において,ABUSはHHUSと比較し,病変が認識できる場合は,coronal画像での乳頭からの距離は一目瞭然となり,複数病変がある場合は全体の位置関係もわかる.coronal画像での構築の乱れも描出可能である.一方で,病変が小さく,前方境界線の断裂がなく,D/W比が高くなく,構築の乱れを伴わない病変(娘結節,乳管内病変を含む)は,画像が荒いABUSでは嚢胞との区別もつきにくく,HHUSを併用しHHUSを元に探索すれば同定が何とか可能にはなるものの,画像が荒いABUS単独では偽陰性となる可能性が示唆された.ABUSを単独で検診に用いる際には偽陰性が防げないことを認識しておく必要があり,偽陰性低下のためにも,ABUSの画像精度の向上を期待したい.