Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 乳腺
乳腺 2

(S740)

診断に苦慮した男性乳癌の一切除例

Ultrasound findings with male breast cancer -a case report-

水野 さよか1, 熊谷 佳奈江1, 渋谷 賢一1, 吉原 靖之1, 高瀬 優2, 岡田 基2, 市川 悠子3, 三浦 弘善3, 行方 浩二3, 西岡 暢子4

Sayoka MIZUNO1, Kanae KUMAGAI1, Kenichi SHIBUYA1, Yasuyuki YOSHIHARA1, Masaru TAKASE2, Motoi OKADA2, Yuko ICHIKAWA3, Hiroyoshi MIURA3, Koji NAMEKATA3, Nobuko NISHIOKA4

1越谷市立病院臨床検査科, 2越谷市立病院臨床検査科・病理診断科, 3越谷市立病院外科, 4越谷市立病院産婦人科

1Department of Clinical Laboratory, Koshigaya Municipal Hospital, 2Department of Clinical Laboratory and Pathology, Koshigaya Municipal Hospital, 3Department of Surgery, Koshigaya Municipal Hospital, 4Department of Obstetrics and Gynecology, Koshigaya Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
男性乳癌は比較的稀で, 全乳癌の0.6-1.0%と言われている. 今回, 超音波所見上嚢胞内癌を疑い, 診断に苦慮した男性乳癌の一例を経験したので報告する.
【症例】
60歳代男性. 既往歴 家族歴は特記事項なし. 現病歴 1年前より左乳房の腫瘤を自覚しており, 2ヶ月前より増大を認めたため当院外科へ紹介受診となった. 初診時 左乳頭外側に圧痛を伴う3cm大の可動性良好な弾性軟の腫瘤を触知. 乳頭異常分泌物あり, 皮膚所見なく腋窩リンパ節も触知しなかった. 乳房超音波検査(US)では左乳房ECD領域に28×28×22mmの混合性腫瘤を認めた(図1). 形状は円形で境界明瞭. 後方エコー増強, 縦横比0.8. 嚢胞内には広基性に突出する隆起性病変を認め, 充実性部分の内部エコーは均質, 高エコースポットやカラードプラ法にて血流信号は認めず, 腫瘤内下層に液面形成を認めたため, 第一に嚢胞内癌を疑った. マンモグラフィー検査では左乳頭近傍に境界明瞭な高濃度腫瘤陰影を認めた(カテゴリー4). MRI検査では, dynamic studyにおいて充実性部分に増強効果を認めた. 嚢胞内容液は漿液性で穿刺吸引細胞診はClassⅡだった. 画像上, 悪性を否定できず再度病理組織学的検査を施行. 二度目の穿刺吸引細胞診は ClassⅢb, 吸引式針生検では良悪性鑑別困難な結果となった. USでは, 充実性部分が前回より増大し, 形状不整形, 内部エコーは不均一に変化し, 複数の拍動性血流を認め, 悪性が強く疑われた. 確定診断のために乳房部分切除術が施行された. 切除検体では嚢胞は確認できず嚢胞があったと想定される乳頭下には組織学的に線維化があり, 微小な浸潤性乳管癌(乳頭腺管癌)の診断であった.
【考察】
男性乳腺に発生する混合性腫瘤は極めて稀であり, 自験例のように嚢胞内病変を示す疾患は, 良性では嚢胞内乳頭腫, 悪性では嚢胞内癌があげられる. 嚢胞内癌は非浸潤癌であるが嚢胞内腫瘍の形態で病理組織学的に一部に浸潤部分を有する報告もある. この場合男性乳癌の特徴である乳頭腺管癌や充実腺管癌である場合が多い. 自験例では二度のUSで嚢胞内の充実性部分が増大し, 形状が不整形, 内部エコーが均一から不均一へと経時的変化を捉えることができ, より悪性を疑うことができた. 病理組織学的には嚢胞が存在したと想定される乳頭下に線維化があり, 微小浸潤癌を認めたことからUS上悪性腫瘤を疑ったことは妥当と考える.