Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 乳腺
乳腺 2

(S739)

急速に増大し嚢胞内癌との鑑別が困難であった乳管内乳頭腫の1例

A case of intra-ductal papilloma with rapid progression, difficult diagnosis from intra-cyctic breast cancer

櫻井 健一, 安達 慶太, 窪田 仁美, 鈴木 佑奈, 武井 咲月, 鈴木 周平, 原 由起子, 榎本 克久, 平野 智寛, 藤崎 滋

Kenichi SAKURAI, Keita ADACHI, Hitomi KUBOTA, Yuna SUZUKI, Satsuki TAKEI, Shuhei SUZUKI, Yukiko HARA, Katsuhisa ENOMOTO, Tomohiro HIRANO, Shigeru FUJISAKI

1日本大学・医学部外科学系・乳腺内分泌外科学分野, 2医療法人社団・藤崎病院外科

1Breast and Endocrine Surgery, Nihon University School of Medicine, 2Department of Surgery, Fujisaki Hospital

キーワード :

 乳管内乳頭腫は良性腫瘍であるが,腫瘍径が小さいと画像診断では癌との鑑別を要すことが多い.われわれは急速に増大し嚢胞内乳癌との鑑別が困難であった乳管内乳頭腫の1例を経験し,良性疾患に対する経過観察の期間や方法の重要性を考えさせられたので報告する.
 症例は39歳の女性.3年前より左乳房腫瘤を自覚したため,近医を受診し,経過観察されていた.その後急速に腫瘤の増大を認めたため当科を紹介・受診した.来院時,左AB領域に1.8cmの腫瘤,その周囲に0.5cmと0.3cmの腫瘤を認めた.針生検の結果,乳管内乳頭腫の疑いであった.1年後に受診した際に,腫瘤は3cmに増大していた.超音波検査では,左乳房AB領域に3×2cmの血流信号を有する辺縁整,内部不均一な低エコー腫瘤とその周囲に1.6cmと4mmの腫瘤を認めた.吸引式針生検の結果,乳管内乳頭腫の診断であったが,画像診断で悪性の可能性が示唆されたため,左乳房腫瘤切除術を施行した.摘出標本の病理組織診断は乳管内乳頭腫であり,悪性所見を認めなかった.
 乳管内乳頭腫は良性腫瘍であり,中枢性単発病変の場合,癌化の可能性は少ないと考えられており,定期的にfollow upすることは,あまり必要とされないとされている.しかしながら本症例のごとく急速に増大し,出血を呈す場合などがある.Dense Breastの場合,マンモグラフィでは描出できないこともあり,経過観察には超音波検査が有用であると考えられる.癌との鑑別に難渋することも多いため,注意深く観察する必要があると考えられた.