Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 乳腺
乳腺 1

(S736)

日常乳腺診療におけるBモード+カラードプラ+エラストグラフィの検討

Evaluation of Breast ultrasonography by Combined Use of Color Doppler and Elastography with B-Mode in Daily Practice

奥野 敏隆, 久下 加奈栄, 廣瀬 圭子, 登尾 薫, 内田 浩也

Toshitaka OKUNO, Kanae KUGE, Keiko HIROSE, Kaoru NOBORIO, Hiroya UCHIDA

1神戸市立西神戸医療センター乳腺外科, 2神戸市立西神戸医療センター臨床検査技術部

1Department of Breast Surgery, Kobe City Nishi-Kobe Medical Center, 2Department of Clinical Laboratory, Kobe City Nishi-Kobe Medical Center

キーワード :

【目的】
日常乳腺診療における超音波Bモード法にカラードプラ(CD)とエラストグラフィ(E)を追加する検査法(B+CD+E)の有用性を検証する.
【対象と方法】
対象は2015年12月から2016年11月までの1年間に乳腺外来にて超音波検査を行った1413人のうち,B+CD+Eを行った250人268腫瘤である.年齢は51.7±13.4歳,腫瘍径は11.7±7.1mm.使用機種は日立製作所製Noblus.全例筆頭演者が検査を行った.CDは血流表示エリア,速度レンジ,カラーゲインを最適化して行い,日本乳腺甲状腺超音波医学会編集乳房超音波ガイドライン第3版(ガイドライン)の良性・悪性の判定基準案に準じて評価した.エラストグラフィはminimal vibration法で行い,装置のupdate機能を用いて最適な画像を選択した.Tsukuba elasticity scoreに準じて評価を行った.超音波画像をretrospectiveに評価し,ガイドラインに準じてBモードのカテゴリー判定を行った.カラードプラ法で悪性が示唆される「貫入する血流」,「周辺の血流増加」を認めた場合は+1,良性が示唆される「血流を欠く」,「境界に沿う血流」を認めた場合には-1を,エラストグラフィでスコア1,2と判定した場合には-1を,スコア4,5では+1をそれぞれBモードのカテゴリーに追加したものをB+CD+E法のカテゴリー判定とした.BモードとB+CD+E法のカテゴリー判定,切除例と2年以上経過観察例における感度,特異度,正診率を検討した.
【結果】
乳がんは57腫瘤で全例組織診断が確定している.診療経過の内訳は切除55,薬物療法1 ,経過観察1であった.乳がん以外の211腫瘤のうち切除例は6(線維腺腫5,乳管内乳頭腫1),マンモトーム生検施行3(線維腺腫1,乳腺症1)であった.残りの202腫瘤は経過観察中である.この202腫瘤のうち73腫瘤に細胞診施行(良性: 47,鑑別困難1,検体不適正: 25),2年以上経過観察したものは102腫瘤であった.乳がんのBモードカテゴリー判定はカテゴリー5: 13,4a: 11,4b: 28,3b: 5,B+CD+E法カテゴリー判定はカテゴリー5: 35,4a: 10,4b: 9,3b: 3であった.B+CD+E法はBモードに比べて悪性よりの判定となった.乳がん以外のBモードカテゴリー判定はカテゴリー2: 31,3a: 100,3b: 78,4a: 2,B+CD+E法カテゴリー判定はカテゴリー2: 181,3a: 25,3b: 4,4a: 1であった.B+CD+E法はBモードに比べて良性よりの判定となった.穿刺生検の適応の基準となるカテゴリー3aと3bの間を良悪性のカットオフとした場合,切除61腫瘤(うち乳がん55,良性6)+マンモトーム生検3腫瘤+良性病変として2年以上経過観察101腫瘤の合計165例の感度,特異度,正診率はBモードで100%,48%,65%,B+CD+E法で100%,96%,97%であった.
【考察】
乳がん検診の手法はマンモグラフィが基本であるが,超音波による検診も人間ドック等でひろく行われている.さらに,マンモグラフィにおける乳がんの検出感度が低いとされるdense breastに対して補助的乳房超音波検査の有用性が期待されている.しかし,超音波は陽性反応適中率が低く,良性病変に対して無用の生検や経過観察を強いることが少なくない.Bモード法は組織推定による形態診断であり,カラードプラ法は血流動態診断,エラストグラフィは歪みで表れる組織特性診断である.B+CD+E法は同じプローブで,簡易な操作でこれらの一連の情報を得ることができる.そして,すでに諸家の報告にあるように,今回の検討においても感度を低下させることなく特異度の向上,正診率の向上が得られた.B+CD+E法の普遍的なカテゴリー判定基準の策定が求められる.