Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎盤・臍帯 2

(S733)

高周波プローブとSMIを用いた癒着胎盤の超音波組織学的診断

Sono-histological diagnosis of the placenta accreta spectrum

長谷川 潤一, 吉岡 範人, 古谷 菜摘, 原田 賢, 佐々木 貴充, 倉崎 昭子, 鈴木 直

Junichi HASEGAWA, Norihito YOSHIOKA, Natsumi FURUYA, Satoshi HARADA, Takamitsu SASAKI, Akiko KURASAKI, Nao SUZUKI

聖マリアンナ医科大学産婦人科学

Department of Obstetrics and Gynecology, St. Marianna Univsersity School of Medicine

キーワード :

【背景】
癒着胎盤の超音波診断において,子宮筋層の菲薄化,前回帝王切開創部への侵入像などは癒着胎盤の直接的な病態を観察しているものであるが,穿通胎盤など程度の強いものでないと診断が難しい.また,Placenta lacunae,bulging,子宮壁や膀胱境界のドプラ増強などは,癒着胎盤を直接所見というより,二次的に発生した子宮・胎盤のマーカーに過ぎない.今回我々は,TOSHIBA Medical Systems社製 Aplio i800(高周波リニアプローブ)と,モーションアーチファクトを軽減するアルゴリズムによる微細血流表示を可能にしたSMI(Superb-microvascular imaging)ドプラの繊細な画像情報を用いた病理組織診断に迫る癒着胎盤の超音波所見を得たので報告する.
【症例】
30歳代,2経産(子宮下部横切開の帝王切開2回).子宮前壁を主に付着する前置胎盤を認め,厳重フォローアップしていた.胎盤は既往帝王切開創部上にもかかっており,3.5MHzのconvex プローブでは膀胱と子宮の間の筋層が保たれており,同部の血流増強,膀胱やや頭側の子宮筋層と胎盤の間(clear zone)が不明瞭であることのみが分かった.18-24MHzのリニアプローブとSMIを用いると,highechoicな子宮漿膜は連続していたが,膀胱上縁中央に直径2cm程度に,筋層と筋層内を走行する血管が欠損している部分があった.Villous treeをSMIで追うと,子宮漿膜近くまで絨毛血管の血流を描出できた.また,終末絨毛は,癒着胎盤のない部分においては末梢が細くなっていたが,同部では終末絨毛も末端が拡大,鈍化していた.以上より,前置胎盤および前回帝王切開創部のPAS(穿通胎盤)と診断し,妊娠35週に予定帝切と二期的な子宮全摘を計画した.子宮底部横切開で児を娩出後,胎盤に触れることなく切開部を縫合して閉じ帝切を終了した.膀胱直上の子宮漿膜は暗赤色の胎盤が透見され穿通胎盤であった.血流減弱を待機中には感染,出血などのトラブルはなかった.3日後,子宮動脈塞栓術を施行後,子宮全摘術を施行した.
【考察】
高周波リニアプローブとSMIによる子宮筋と胎盤の詳細な観察によって,癒着胎盤の病理組織学的変化を直接的に捉えられることができた.理論上の解像度は80μmであり,穿通胎盤などの程度の強いものでなくても,子宮筋層に侵入する絨毛組織,絨毛血管を超音波断層法で直接診断することが可能となれば,癒着胎盤の診断精度が向上し,母体の周産期予後の改善に繋がると考えられた.