Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎盤・臍帯 2

(S733)

癒着胎盤との鑑別にSMIが有用であった遺残胎盤の一例

SMI imaging of retained placenta easily distinguished from abnormal invasive placenta

古谷 菜摘, 長谷川 潤一, 吉岡 範人, 佐々木 貴充, 原田 賢, 鈴木 直

Natsumi FURUYA, Junichi HASEGAWA, Norihito YOSHIOKA, Takamichi SASAKI, Satoshi HARADA, Nao SUZUKI

聖マリアンナ医科大学病院産婦人科学

Department of Obstetrics and Gynecology, St.Marianna University School of Medicine

キーワード :

【症例】
30歳,2妊1産(1回流産).既往歴に特記すべきことはない.近医,有床診療所で妊娠39週1日に,正常経腟分娩となった.児娩出後,胎盤娩出のため臍帯の牽引を行ったところ臍帯が断裂し,胎盤用手剥離で胎盤娩出した.娩出した胎盤は臍帯卵膜付着であった.その後,出血や発熱などの徴候はなく,産褥5日目に退院した.発熱を認め,産褥8日目に前医を受診,超音波検査で子宮内に胎盤遺残を認め,全身麻酔下に掻爬試みたが困難であり,治療目的で当院紹介となった.腹部は平坦,軟,子宮は手拳大で収縮は良好,可動性良好,子宮体部よりの子宮両側の側壁の圧痛を認めた.Blumberg徴候はなかった.子宮口は2指開大し,出血は少量であったが悪臭を伴う,膿様帯下を認めた.血液検査所見は,WBC 19.9×10³/μL,Hb. 7.7 g/dL,Plt. 43.5×10³ /μL,CRP 12.54 mg/dLであった.超音波断層法B-mode(2-5 MHz)では,腹腔内には液体貯留を認めず,子宮内腔(直径8cm)に不整なエコー輝度をもつ腫瘤を認めた.子宮筋層は全周で菲薄化を認めなかったが,子宮筋層と胎盤と考えられる腫瘤との付着部位を同定するのは困難であった.Conventional color Doppler(Transabdominal transducer; PRF 1.3 kHz)では,子宮筋層および内腔の腫瘤に著明な血流を認めなかった.そこで,微細血流を描出可能にしたSMI(Superb-microvascular imaging, TOSHBA Medical Systems, Japan)Dopplerを用いて同部を観察したところ(Transabdominal transducer; CD-PRF 1.5 kHz, B-mode 18 MHz),後壁に付着する胎盤と,後壁の螺旋動脈から腫瘤内に流入する血流,腫瘤内での緩やかな血流を描出し,子宮後壁の胎盤遺残と遺残胎盤内に流れる絨毛間腔の血流を診断し得た.胎盤遺残による子宮内感染と診断し,臨床経過を含めて癒着胎盤のリスクは少ないと考え,全身麻酔下に,癒着胎盤や止血困難時の子宮全摘ができる体制で,子宮内容除去術を行った.経腹超音波ガイド下に胎盤を胎盤鉗子で掴み,ゆっくり牽引,娩出した.胎盤の3分葉(cotyledon)が遺残していた.術後すみやかに,抗生物質の点滴で子宮内感染は軽快し退院した.
【考察】
経腟分娩後の胎盤遺残と,癒着胎盤との鑑別の難しい症例は少なくない.遺残胎盤,癒着胎盤の治療法は異なるため,速やかに鑑別を行って,対応しなければならない.SMIは,それらの鑑別に有用な新しい超音波診断法のひとつであると考えられた.