Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎盤・臍帯 2

(S731)

前置血管の超音波診断と管理に関する疫学調査

Epidemiological survey on ultrasound diagnosis and management of vasa previa

佐々木 貴充, 長谷川 潤一, 古谷 菜摘, 原田 賢, 今井 悠, 鈴木 由妃, 倉崎 昭子, 鈴木 直

Takamichi SASAKI, Junichi HASEGAWA, Natumi FURUYA, Ken HARADA, Haruka IMAI, Yuki SUZUKI, Akiko KURASAKI, Nao SUZUKI

聖マリアンナ医科大学産婦人科学

Department of Obstetrics & Gynecology, St. Marianna University School of Medicine

キーワード :

【目的】
前置血管は,卵膜血管が内子宮口上にあるため,胎児先進部の圧迫や破水時の血管断裂のリスクが極めて高い.かつての胎児死亡率は,破水症例では70~100%であると言われていた.分娩中の診断は困難であり,前置血管が分娩前に超音波診断されていた症例では,97%の児生存率であるのに対し,診断されていなかった場合は44%しかなかったという報告がある.前置血管は,分娩前の超音波診断と破水前の帝王切開が児の救命に必須である.しかし,前置血管を健診で偶然見つけるのは困難である.系統立てた前置血管や卵膜付着に対する超音波スクリーニングが必要である.そこで,本邦の周産期予後の改善の一助になることを目的として,前置血管や卵膜付着の超音波スクリーニングの実態調査を行い,今後必要な提言など発信するべく調査を行った.
【方法】
2017年11月,MFICU連絡協議会のメーリングリストに所属する施設に対してアンケート調査を行った.前置血管や卵膜付着の超音波診断,管理についてメールで質問を行い,メールおよびFAXで回答を集めた.本研究は,日本産科婦人科学会関東連合およびMFICU連絡協議会の倫理委員会の承認を得て行った.
【結果】
12月現在53例の施設から回答があった.胎児の形態異常の検出を目的とした超音波検査を行っている施設は94%あり,そのチェック項目に臍帯付着部の確認が含まれている施設は83%あった.妊娠中に1回以上前置胎盤の有無を確認している施設は100%であったが,臍帯付着部に関しては84%,胎盤の形態異常に関しては52%,前置血管に関しては84%であった.卵膜付着,前置血管と診断したときに外来NSTの頻度を多くする施設は,それぞれ24%,33%,管理入院をするのは0%,77%,早めの帝王切開を施行するのが1%,75%であった.管理入院の基準は,週数,頸管長,子宮収縮を考慮し,緊急帝王切開の基準は,破水,胎児機能不全,頻回の子宮収縮,子宮口開大などを考慮するという記載があった.
【考察】
本調査の対象においては8割以上の施設で,妊娠中の前置血管を意識した超音波検査が行われていることが明らかになった.また,前置血管や卵膜付着を診断したときに,NSTや子宮口の状態を勘案したフォローアップによって,各施設で管理入院や帝王切開のタイミングを決めて,緻密に管理していることが分かった.しかし,本結果の対象施設は高次施設であり,今後,一次施設にも同様な調査を行い,本邦の前置血管の診断率向上と適切な管理のための指針を作成したい.