Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児血流

(S730)

Cerebroplacental ratioを用いた胎児鏡下レーザー術後の晩期胎児死亡のリスク評価

Low cerebroplacental ratio can predict late fetal demise of smaller twin with abnormal umbilical artery flow after fetoscopic laser surgery

鷹野 真由実, 中田 雅彦, 長崎 澄人, 佐久間 淳也, 河西 貞智, 森田 峰人

Mayumi TAKANO, Masahiko NAKATA, Sumito NAGASAKI, Jyunya SAKUMA, Sadanori KASAI, Mineto MORITA

1東邦大学大学院医学研究科産科婦人科学講座, 2東邦大学医療センター大森病院産婦人科

1Obstetrics and Gynecology, Toho University Graduate School of Medicine, 2Obstetrics and Gynecology, Toho University Omori Medical Center

キーワード :

【目的】
胎児鏡下レーザー凝固術(FLP)を施行した一絨毛膜双胎において,donor/smaller twin(小児)の晩期胎児死亡ないし新生児死亡(FND)のリスク評価として,胎児中大脳動脈/臍帯動脈の拍動係数比(cerebro-placental ratio:CPR)の有用性を検討した.
【方法】
2015年から2017年に双胎間輸血症候群およびselective IUGRに対してFLPを施行し,妊娠転帰が判明している症例を対象とした.超音波パルスドプラ法を用いて術前,術後1日目,術後4-7日目,術後9-15日目に臍帯動脈(UA)・中大脳動脈(MCA)・静脈管(DV)の血流波形の評価を行なった.CPRはMCAとUAの拍動係数(pulsatility index:PI)を用いて算出した(CPR = MCA-PI / UA-PI).FNDは術後30日以降に胎児死亡もしくは早期新生児死亡となった症例とした.
【結果】
症例数は46例で,小児の胎児死亡を術後7日以内に3例,術後30日以降に7例認めた.早期新生児死亡となった症例はなかった.FND群7例の胎児死亡までの期間は中央値49日(31-105日)であり,全例で術前にUAの血流波形異常(拡張末期途絶/逆流)を認めていた.7例中4例にDVの血流波形異常(心房収縮期途絶/逆流)を認めていた.FND群のCPRは術前より中央値0.54(0.42-0.74)と低値であり,術後9-15日目には0.35(0.27-0.61)とさらなる低下傾向を認めた.続いて,FLP後の胎児死亡のリスク因子として挙げられる術前のUA血流波形異常症例15例におけるCPRの推移を検討した.その内,8例(53%)が生産に至り,7例(47%)がFNDに至った.術前のCPRは,生産群で中央値0.68(0.50-0.90)とFND群と有意差を認めなかった(p = 0.40).また,術後1日目のCPRにおいても両群間に有意差を認めなかったが(p > 0.05),術後9-15日目のCPRにおいて,FND群では0.35(0.27-0.61)と術前よりさらに低下したが,生産群では1.07(0.94-1.83)と上昇しており,FND群に比較し有意に高値だった(p = 0.001).
【考察】
FLP前にUA血流波形異常を合併し,術後9-15日目までの経過でCPRが0.61以下に低下した症例では全例が胎児死亡に至っていた.術後9-15日目のCPRは,FLP後に残存する固有の胎盤領域を反映し,その低下は残存胎盤の狭小化を反映していると考えられた.一方,術前にUA血流異常を認めていたが生産に至った症例では,術前に低値であったCPRは,術後に改善を認めていた.FLP後2週間の時点でのCPRの計測によって,術後30日以降の胎児死亡の有無の予測が可能であり,患者への情報提供や周産期管理において有用な情報になると考えられた.