Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児血流

(S729)

Dual Dopplarを用いた胎児循環 -正常例とFGRとを対象としたpreliminaryな検討-

Dual Dopplarpreliminary

瀬戸 理玄, 梁 栄治, 西澤 美紀, 森田 政義, 櫻井 理奈, 松本 泰弘, 司馬 正浩, 木戸 浩一郎, 綾部 琢哉

Michiharu SETO, Eiji RYO, Miki NISHIZAWA, Masayoshi MORITA, Rina SAKURAI, Yasuhiro MATSUMOTO, Masahiro SHIBA, Koichiro KIDO, Takuya AYABE

帝京大学医学部附属病院産婦人科学講座

Obstetrics and Gynecology, Department of Obstetrics and Gynecology, School of Medicine, Teikyo University, Japan

キーワード :

【目的】
宮下らは,胎児血管の脈波伝播速度が胎児血圧と関連していることを報告している.我々は,市販の超音波機器(Hitachi HI VISION Preirus)で使用可能なdual Doppler法を応用すると,胎児血流の脈波伝播時間の測定が可能なことに着目し,胎児循環の新たな指標となる可能性があると考えた.今回,正常発育胎児と胎児発育不全(FGR:fetal growth restriction)児とを対象として,preliminaryに脈波伝播時間を計測してみた.
対象:当院に入院中の単胎妊娠症例のうち同意が得られた症例を対象とした.結果的に正常妊娠分娩経過となり,新生児経過にも異常を認めなかった症例57例,91回の検査結果と,推定体重が-1.5 S.D未満であったFGR症例16例,32回とについて検討した.
【方法】
1.実際に臨床で用いることを視野にいれ,日常頻繁に測定している胎児腹部の断面をわずかに足方にずらして,胎児の腹部大動脈に直行し,腹壁臍帯付着部位の高さの横断面を描出する.
2.Dual Dopplerを用いて1つの測定部位を胎児の腹部大動脈に,もう一方を腹壁臍帯付着部位の臍帯動脈に設定する.
3.上記2か所のドプラ波形を同時に記録し,動脈血流波形が発生する両者の先頭の時間差(msec)を測定する.
【検討項目】
1. 大動脈から内腸骨動脈を経て腹壁の臍帯動脈付着部に至るまでの距離を脈波が伝達するのにかかる時間(pulse wave time: PWT)と,妊娠週数との関連をみた.
2. 血流脈波の伝播速度を計算するためには,脈波伝播する血管の長さを測定する必要があるが,検査の簡便性を重要視して,ルーチンに測定されている大腿骨長で代用した.胎児大腿骨長 / 血流脈波の伝達時間(FL / PWT)を計算し,この比と妊娠週数との関連をみた.
3. 上記1, 2の計測について正常例とFGR症例との分布をみた.
【結果】
1. 脈波伝播時間は,妊娠週数に伴う有意な変化を示さなかった.
2. FL / PWTは,妊娠週数に伴う有意な変化を示さなかった.
3. FGR症例のFL / PWTは,正常例のFL / PWTの近似直線よりも上側に10データ,下側に22データあった(図1).また,同時に計測した臍帯動脈血流波形が途絶しているFGR例が1例あり,このときのFL / PWTは最低値であった.
【考察】
血流脈波の伝播速度は胎児循環の新たな指標となる可能性があると考えた.今後症例を重ねて検討したい.
参考文献 1)Miyashita S et al. Ultrasound Med Biol. 2015; 41:1311-9.