Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児行動・予後予測他

(S726)

先天性横隔膜ヘルニアにおける肺低形成の重症度予測とその長期予後

Prognosis assessment of lung hypoplasia and long-term outcome in congenital diaphragmatic hernia

山本 祐華, 伊藤 茂, 吉田 幸洋, 板倉 敦夫

Yuka YAMAMOTO, Shigeru ITOU, Koyo YOSHIDA, Atsuo ITAKURA

1順天堂大学医学部附属浦安病院産婦人科, 2順天堂大学産婦人科

1OB & GYN, Juntendo University Urayasu Hospital, 2OB & GYN, Juntendo University Faculty of Medicine

キーワード :

【目的】
先天性横隔膜ヘルニア(CDH)は20-30%の周産期死亡率を有する治療に難渋する疾患であり,その予後は肺低形成と相関すると言われている.肺低形成の重症度を評価することがCDHの予後予測に繋がるため,今までにMRIや超音波を用いた様々な予後予測因子が報告されている.observed/expected lung head circumference ratio(o/e LHR)は健側肺の面積を評価する方法で,簡便かつ短期予後と相関する因子として汎用されている.肺動脈(PA)径は肺重量との相関があると報告されており,また血流評価においては肺血管抵抗が高い場合(=肺低形成),PAドプラーではacceleration time / ejection time(AT/ET)の短縮,pulsatility index(PI)の高値,peak early diastolic reverse flow(PEDRF:拡張早期に動脈管を通じて両側PAに逆流してくる血流)の高値が,肺低形成を示す指標として提示されている.今回超音波を利用した重症度因子の出生後の予後予測に対する有効性を明らかにすることを目的に,超音波計測因子と予後の関係について検討した.
【方法】
2012年から2017年9月に当施設で出生前診断を行い分娩となったCDH児32症例を後方視的に検討した.超音波計測因子としてはPA z-score, o/e LHR, また健側PAのドプラーにおけるAT/ET, PEDRF, PIを計測した.短期予後としては生存,死亡で比較し,挿管期間についても評価した.長期予後として1歳時の体重(SD),胸郭変形の有無,呼吸に関する特記所見を評価した.2群間の比較はMann-Whitney試験を行い,相関関係の評価はスピアマンの順位相関係数を指標とした.
【結果】
生存群と死亡群の比較では,o/e LHRにおいて死亡群では生存群と比較して有意に低値を示した(p<0.001).健側PA z-scoreは死亡群で有意に低値であったが(健側 p<0.05(生存群-0.36±0.75, 死亡群-1.29±1.10)), 病側 PA z-scoreは死亡群での低値の傾向を示すのみで有意差には至らなかった(p=0.05(生存群-1.60±0.94, 死亡群-2.44±1.47)).健側PAのドプラー指標では,AT/ETにおいては死亡群でやや低値の傾向を認めたものの,有意差には至らなかった(p=0.09).PEDRFやPIにおいては両群で有意差は認めなかった.挿管期間については,健側PA z-scoreにおいて関係性は認めなかったものの,健側PAのAT/ETについては挿管期間との弱い負の相関関係を認める傾向があった(r=-0.45, p=0.05).o/e LHRについても同様に挿管期間に関して弱い負の相関関係を示す傾向があった(r=-0.40, p=0.07).CDH生存児において1歳時の平均体重SDは-0.97±0.63であったが,成長とともに標準体重へ近づいていく傾向を認めた.出生前の評価因子と生後体重の変化との相関は認めなかった.初回手術を乗り越えた症例においてはその後明らかな呼吸障害が持続する症例は認めないものの,20症例中2症例において4歳の時点でごく軽度の胸郭変形を有した.
【考察】
既存の報告通り,出生前評価として致死的かどうかを評価するにはo/e LHRが最も優れていることが示された.したがって現在,重症CDH胎児への胎児治療の可否の判断にo/e LHR<25%(27w0d- 29w6d)を基準にしているが,我々のコホートでもo/e LHRが生命予後予測には最も優れていた.また致死的かどうかの評価だけではなく,挿管期間と相関を認めたAT/ETは有意差には至らなかったものの,呼吸障害との関連性を示す可能性がある.肺面積の評価と肺血管抵抗の評価はそれぞれ違った側面の評価を行える可能性があり,超音波ドプラー法を併用した出生前評価は重要と考える.