Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児心臓

(S723)

胎児死亡となった先天性心疾患症例の検討

Trends of fetal death complicated with Congenital heart disease

堀内 縁, 中西 篤史, 釣谷 充弘, 神谷 千津子, 岩永 直子, 根木 玲子, 黒嵜 健一, 吉松 淳

Chinami HORIUCHI, Atsushi NAKANISHI, Mitsuhiro TSURITANI, Chizuko KAMIYA, Naoko IWANAGA, Reiko NEKI, Kenichi KUROSAKI, Jun YOSHIMATSU

1国立循環器病研究センター周産期・婦人科, 2国立循環器病研究センター小児循環器科

1Perinatology and Gynecology, National Cerebral and Cardiovascular Center, 2Pediatric Cardiolody, National Cerebral and Cardiovascular Center

キーワード :

【目的】
胎児超音波検査の発展に伴い,これまで胎内では診断されていなかった重症な先天性の疾患も胎児期に診断されるようになってきた.特に,胎児心臓超音波検査の普及に伴い,非常に重症な心疾患例,特に胎内で進行性に心機能が低下し,心不全や胎児水腫となる予後不良な症例や,胎外での治療が困難と考えられる症例を認めるようになってきた.今回,胎児心疾患が疑われ,当院へ紹介され,胎児先天性心疾患の診断を施行した症例のうち,子宮内胎児死亡となった症例について調査,検討した.
【対象・方法】
2011年1月から2017年11月の期間に,当院にて胎児心臓超音波検査を施行し胎児診断した581例のうち,その後子宮内胎児死亡となった14例を対象とした.初診時の妊娠週数や胎児心疾患の診断,心外奇形や染色体異常の有無,そして剖検の有無やその所見について検討した.
【結果】
当院紹介時の妊娠週数は26.9±4.4週,初診時から胎児水腫を3例に認め,全て心原性の胎児水腫と考えられた.心疾患以外の超音波所見として,心外異常を5例(35.7%)に認め,胎児発育不全(FGR)合併例は7例(50%),羊水過多合併は3例(21.4%)認めた.FGR合併例の7例のうち,多発奇形を認め,重篤な染色体異常(13トリソミーもしくは18トリソミー)の可能性が高いと考えられた4例は羊水検査を行い,全例に重篤な染色体異常が確定した(13トリソミー 2例,18トリソミー 2例).
胎児死亡の原因として考えられる疾患の内訳は,心疾患が5例(35.7%),重篤な染色体異常は4例(28.6%),染色体異常がなく-2SD以上の高度FGR合併2例(14.3%),臍帯因子1例(7.1%),原因不明が2例(14.3%)であった.染色体異常がなく高度FGR症例2例のうち,胎外での外科的治療が,未熟性のある早産では困難と考えら待機した例が1例,児の疾患の受け入れが困難であり待機した例が1例であった.胎児死亡の原因が心疾患と考えられる5例の紹介時の平均妊娠週数は26.6±4.6週であり,胎内死亡を確認した平均妊娠週数は30.2±5.5週であった.胎児先天性心疾患診断は,Ebstein奇形1例,拡張型心筋症様1例,高度三尖弁逆流を伴った三尖弁異形成・大動脈蛇行合併1例,高度な房室弁逆流を伴った共通房室弁・両大血管右室起始・肺動脈閉鎖・総肺静脈灌流異常1例,徐脈性不整脈1例であった.前3例が初診時より胎児水腫を認め,高度な房室弁逆流を認めた症例は経過中に胎児水腫を来した.いずれの症例も早期娩出が,児の予後改善に寄与しないと考えられ待機していた.剖検は6例(42.9%)施行した.高度FGR症例2例のうち,1例は心疾患(肺動脈閉鎖)以外に臍帯高度過捻転と臍帯動脈の1本の低形成を認め,これがFGRの原因と考えられた.もう1例では,心疾患(両大血管右室起始,肺動脈狭窄)以外に,両肺分葉異常を認めたが,FGRの原因は明らかではなかった.大動脈蛇行を認めた症例については,遺伝子解析も施行しFBLN4遺伝子の変化を認めた.
【考察】
胎児先天性心疾患の診断ののち,子宮内胎児死亡となった症例について検討した.早産期に胎児水腫を呈する症例,染色体異常の症例,重篤なFGR症例では胎内死亡のリスクが高いと考えられた.重症な先天性心疾患が胎児期に診断されるようになり,同時にその治療や予後も含めたカウンセリングの重要性と,他職種での患者・家族へのサポートの必要性が示唆されている.胎内死亡の可能性についてさらに検討を進め,情報提供することが望まれる.