Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児心臓

(S722)

当院における胎児心臓スクリーニングの現状

The present conditions of the fetal heart screening in our hospital

長澤 智子, 三井 伸弥, 三井 卓弥, 川滝 元良

Tomoko NAGASAWA, Shinya MITSUI, Takuya MITSUI, Motoyoshi KAWATAKI

1三井病院超音波検査室, 2三井病院産婦人科, 3神奈川県立こども医療センター新生児科

1Ultrasonic laboratory, Mitsui hospital, 2Obstetrics and Gynecology, Mitsui hospital, 3Neonatology, Kanagawa Children's Medical Center

キーワード :

【目的】
当院は年間約600件の分娩を扱っており,妊娠12週,20週,30週前後の妊婦を対象に胎児超音波スクリーニングを実施している.検者は診療放射線技師1名,臨床検査技師1名の2名体制で行っており,スクリーニングされた症例は,近隣又は近県の高次医療機関へ紹介されている.今回,胎児心臓スクリーニングの現状と課題を把握するために胎児スクリーニングで検出された症例を後方視的に検討した.
【対象・方法】
2015年4月~2017年3月までに当院にて妊娠20週,30週でスクリーニングされた症例を対象に検査陽性症例および偽陰性症例を診療録より後方視的に検討した.使用機器はGE社製 VOLSON E6を使用した.検査結果はガイドラインに基づいたチェックシートを作成し,医師に報告した.胎位の影響などで観察できなかった項目は,次回妊婦健診時に再検査するよう申し送りを行った.当院では,胎児超音波スクリーニングだけでなく,妊婦健診の胎児計測等も技師が行っている為,再検査も技師が行った.スクリーニングで要精査となった症例は,医師と共に画像を確認した.
【結果】
2015年4月~2017年3月までにスクリーニングを実施した1406例中,出生後の追跡可能な1279例に対して,検査実数は2249回であり,対象期間中に検出された症例は16例であった.診断名は,ファロー四徴症,完全大血管転位症,両大血管右室起始,大動脈弓離断症,単純型大動脈縮窄症4例,心室内腫瘤2例,血管輪,完全型房室中隔欠損,不完全型房室中隔欠損,心室中隔欠損+口唇裂,三尖弁逆流+心室中隔欠損+十二指腸閉鎖,心房中隔欠損+三尖弁逆流)であった.偽陰性は4例(心室中隔欠損2例,心室中隔欠損+心房中隔欠損2例)であった.偽陽性は単純型大動脈縮窄症の3例であり,妊娠30週スクリーニングでは異常なし,妊娠後期に初めて異常を検出し,出生後に正常化した症例であったsensitivity(detection rate)=80%, specificity=99.8%, positive predictive value=99.8%, negative predictive value=99.7% であった.
【考察】
当院のスクリーニングにおいて,ほとんどの症例は20週又は里帰り初回でのスクリーニングで検出することが出来た.偽陰性症例は出生直後に直ちに治療を要する重症例はなかったので,重症心疾患に限定するとdetection rateは100%となった.ガイドラインではカラードプラは必須ではないとされているが,当院では全例にカラードプラを使用した検査を行っている為,重症心疾患の検出率の向上につながったと考えられた.重症心疾患等をスクリーニングし,出生前に高次医療機関へ紹介するという一次医療機関および技師の役割は果たしていると考えられる.疑陽性症例であった単純型大動脈縮窄症の3例は妊娠30週以降胎児頭部に流れる血流の増加に伴って大動脈弓峡部がやや細くなる所見を検出したと思われる.しかし,単純型大動脈縮窄症は疑陽性が多く出生後動脈管が閉じるまで判断がつかない症例が多いため,陽性症例を見逃さないためにも臨床側に報告することは重要であると思われる.小さな心室中隔欠損を検出するための今後の課題としては,4CVの向きやカラードップラーの使用などスクリーニングにおいて注意すべきと考える.今後も出生後直ちに治療介入を必要とする重症心疾患を見逃さないために,スクリーニングの精度,知識,技術の向上を目指したいと思う.