Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
経会陰超音波・頚管評価

(S719)

経会陰超音波検査を指標とする内診の検者間誤差に関する検討

Assessment of Interovsever Variability of Internal Examination Using Transperineal Ultrasound

石本 慶子, 瀬山 貴博, 中山 敏男, 市川 麻祐子, 設樂 理恵子, 古屋 仁美, 入山 高行, 永松 健, 大須賀 穣, 藤井 知行

Keiko ISHIMOTO, Takahiro SEYAMA, Toshio NAKAYAMA, Mayuko ICHIKAWA, Rieko SHITARA, Hitomi FURUYA, Takayuki IRIYAMA, Takeshi NAGAMATSU, Yutaka OSUGA, Tomoyuki FUJII

東京大学医学部附属病院女性診療科・産科

Obstetrics and Gynecology, The University of Tokyo Hospital

キーワード :

【目的】
経会陰超音波検査は分娩の進行および児頭の下降度を客観的に判断し,内診を補完する検査技術として近年普及しつつある.内診による児頭先進部の下降度(Station: St)の判定は主観的であり,検者間による誤差が大きく,習熟に時間を要する.内診時に経会陰超音波検査を併用することで得られる情報は,特に臨床経験の少ない医師にとって,分娩進行の評価および安全な急速遂娩の施行において有用であると同時に,内診技術の向上に役立つ可能性がある.
経会陰超音波検査による分娩進行の評価項目にはProgression Angle(PA),Progression Distance(PD),head direction(HD)等が知られているが,このうちPAは検者間誤差が少なく,stationとの相関関係も高いことが報告されている.今回の研究では,内診および経会陰超音波検査による画像撮影を同時に行い,後日撮影された画像をもとに同一の医師がPAを計測することで,内診におけるSt判定の正確性を検討した.
【方法】
分娩進行者の内診を行い,同時に経会陰超音波画像を記録した.後日内診に関与していない同一の医師が,記録された画像を用いて,恥骨と児頭先進部のなす角度であるProgression Angle(PA)を測定した.
今回の研究では,MRIによる骨盤計測に基づいてPA: 120度がSt: 0に相当するという海外からの既報(D. Iliescu et al. The Angle of Progression at Station 0 and in Magnetic Resonance and Transperineal Ultrasound Assessment. Case Reports in Obstetrics and Gynecology, Volume 2015, Article ID 748327)をもとに,PA: 115~125度をPAに相当するStation(PA-St): +0とし,前後10度間隔でSt: -2~+4までのPA-Stを設定した.そのうえで,内診施行者を産婦人科臨床経験年数に応じて,経験年数7年以上のA群と,6年以下のB群に分け,それぞれの群における内診時のStとPA-Stの一致率を検討した(解析1).
さらに,本邦からの別の報告(坂巻健,他.経会陰超音波による分娩時の児頭嵌入の評価.第82回日超医抄録集.2009; 36: S504)に基づき,PA: 125~135度をPA-St: +0として,上記と同様の解析を行った(解析2).なお同一患者に対する複数回の内診については,それぞれ別個の検査として判定した.また内診所見の値とPAの解析値および一致率については,内診の検者に還元を行った.
【結果】
A群では66回,B群では39回の内診および経会陰超音波の画像撮影が行われた.解析1および解析2のいずれにおいても,A群ではB群に比較して,内診時のStとPA-Stの一致率が高い傾向にあった.特に解析1において,B群では内診時のStがPA-Stに比べて小さくなっており,実際の児頭の高さよりもStationを高く評価している傾向が認められた.
【結語】
産婦人科臨床経験年数が進むにつれて,内診所見とPA-Stとの一致率が高くなっていた.内診によって児頭の高さを実際のStationと異なった高さで評価することは,failed forceps / failed vaccumや大きな産道裂傷・児損傷につながる危険性を含んでいる.内診時に経会陰超音波検査を併用することは,安全な分娩管理につながると考えられる.また経会陰超音波検査は産婦人科臨床経験年数の少ない医師の内診技術の向上にとっても有用であることが示唆された.