Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
妊娠初期・胎児基準値 他

(S718)

当院における口唇口蓋裂の診断

Diagnosis of cleft lip and palate

後藤 未奈子, 德中 真由美, 瀧田 寛子, 新垣 達也, 大場 智洋, 仲村 将光, 松岡 隆, 関沢 明彦

Minako GOTO, Mayumi TOKUNAKA, Hiroko TAKITA, Tatsuya ARAKAKI, Tomohiro OBA, Masamitsu NAKAMURA, Ryu MATUOKA, Akihiko SEKIZAWA

昭和大学産婦人科学講座

Obstetrics and Gynecology, Showa University School of Medicine

キーワード :

【目的】
口唇口蓋裂は500-600人に1人に発生する比較的頻度の高い疾患であり,単独の場合の予後は良好な疾患である.しかし,先天性心疾患や染色体異常を合併する場合のその予後は大きく異なる.また,出生時に判明する外表奇形は両親への精神的インパクトが強い.以上より胎児期からの診断管理は重要と思われる.近年,胎児診断は向上しており,当院で出生した口唇口蓋裂症例の診断時期および正診率を検討することを目的に本研究を行った.
【方法】
2011年-2017年までに当院で分娩管理した7531症例を対象とし口唇口蓋裂の診断週数,出生前診断,出生時診断を前方視的に検討した.当院の超音波検査による胎児形態評価は,妊娠11-13週と妊娠19-21週に施行,紹介症例に対しては当院受診時に超音波検査を施行した. 口唇口蓋裂の診断方法は経腹超音波でcoronal/axial viewにより口唇(lip)と口蓋(palate)の評価を行い,cleft lip only(CL),cleft lip with cleft palate(CLP),cleft palate only(CP)の3つに分類した.使用した超音波機器及びプローブはVolsonE8/VolsonE10に,RAB4-8 MHz/RM6Cトランスデューサーを用いた.
【結果】
調査期間内に46例(0.61%))の口唇口蓋裂があり,当院で妊娠初期から管理したのは10例,紹介症例は36例であった.当院管理症例と紹介症例の診断週数の中央値はそれぞれ,20週(13-24),24週(19-32)であった.当院管理症例の10例の診断時期および分類は妊娠初期でCLP:1例,妊娠中期でCL:8例,CLP:2例であった.胎児評価と出生前診断が異なったのは1例(CL→CLP)であった.偽陰性偽陽性症例は共になかった.
紹介症例は36例あり,CL:29例,CLP:7例,CP:0例であった.胎児評価と出生前診断が異なったのは4例(CL3例→CLP3例,CLP1例→CL1例),偽陰性・偽陽性症例は共になかった.
【結論】
当院で管理した口唇口蓋裂の出生前診断は 100%であり,全例において小児科および形成外科のprenatal visitを行い,出生前から他科や児の家族と情報共有を行うことが出来た.また,妊娠初期でCLP症例を診断できた症例が1例あった.発生学的に二次口蓋は8-10週頃から形成されており,今後,超音波機器の解像度が向上することにより妊娠初期においても口唇口蓋裂の診断は可能となると思われる.妊娠初期の診断は,先天性心疾患や染色体異常の合併精査を初期から中期にかけて行うことを可能とし,臨床判断及び検査計画の時間的余裕がうまれると考えられる.診断断面は従来行われてきたcoronal viewだけでなくaxial viewを用いることで口蓋の評価精度を高める可能性があると思われるが,調査期間中にCP症例が認めなかったため,口唇裂を伴わない口蓋裂単独症例の診断方法については今後の検討が必要である.