山本 健太, ABOELLAIL Mohamed, 天雲 千晶, 石橋 めぐみ, 田中 圭紀, 新田 絵美子, 花岡 有為子, 金西 賢治, 田中 宏和, 秦 利之

Kenta YAMAMOTO, Mohamed ABOELLAIL, Chiaki TENKUMO, Megumi ISHIBASHI, Tamaki TANAKA, Emiko NITTA, Uiko HANAOKA, Kenji KANENISHI, Hirokazu TANAKA, Toshiyuki HATA

香川大学医学部周産期学婦人科学

Department of Perinatology and Gynecology, Kagawa University Faculty of Medicine

キーワード :

【目的】
近年3D超音波検査を用いることにより，子宮疾患を血管分布や周辺組織との位置関係をより立体的に，かつ明瞭に描出することが可能となっている．今回我々は，3D超音波を用いて診断した絨毛性疾患および子宮血管病変を提示することにより，その鑑別点について考察する．
【方法】
全胞状奇胎7例，水腫様流産1例，臨床的侵入奇胎2例，子宮動脈仮性動脈瘤1例，Uterine enhanced myometrial vascularity/arteriovenous malformations（EMV/AVMs）3例をHDliveFlow silhouette mode およびHDliveFlow with HDlive silhouette modeを用いて観察した．
【結果】
　全胞状奇胎はカラードプラ法では，血流を伴わない多数の小嚢胞として確認できる．さらに3D超音波を用いると，内部に血流を伴わない，境界明瞭な小嚢胞の数と空間的位置関係を明瞭に観察することができる．
　水腫様流産では，全胞状奇胎とは異なり，数個の小嚢胞の周囲に豊富な子宮の血流が観察される．
　臨床的侵入奇胎は超音波ドプラでは著しい血流が観察される．HDliveFlowでは，奇胎部分がミラーボールの状の血管病変（Mirror-ball appearance）として描出される．治療後は血管病変の中心部分がハート型に欠損した様相を呈し，病変の縮小が認められた．HDliveFlow silhouette modeでは，癒合した腫瘤様の血管像として描出された．
　子宮動脈仮性動脈瘤は，2D超音波では内部に乱流を伴った腫瘤として観察される．パルスドプラ法では子宮動脈仮性動脈瘤に特徴的な2峰性のto-and-flo血流として描出される．HD-flowでは子宮動脈から腫瘤への血流と腫瘤内にyin-yangサインを確認できる．これをHDliveFlow with HDlive silhouette modeを用いて観察すると血流は腫瘤の外側のみに認め，立体的なyin-yangサインが貝状の血流（shell-like appearance）として描出される．
　Uterine EMV/AVMsとは，子宮内動脈静脈間の不完全な短絡路形成のために発生する異常血流のことを指す．超音波ドプラ法では子宮筋層内の異常血流像として観察されるが，3D超音波では拡張した血管が複雑に入り組んだ腫瘤として明瞭に描出できる．パルスドプラでは鋸歯状の拡張期血流の豊富な血流速度波形が特徴的である．
　また子宮内に異常血流を認めた場合には，超音波所見に加えて血中hCG値も，絨毛性疾患と血管病変を鑑別するための重要な臨床情報となる．
【結論】
3D超音波は絨毛性疾患および子宮血管病変を鑑別する上で，臨床的に有用な検査法になりうると考える．