Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
絨毛疾患・産後出血

(S714)

胞状奇胎の超音波診断,病理診断と遺伝子診断

Comparative study between complete and partial hydatidiform mole by ultrasonic diagnosis, pathological diagnosis and genetic diagnosis.

長谷川 ゆり, 三浦 清徳, 東島 愛, 阿部 修平, 吉田 敦, 増崎 雅子, 増崎 英明

Yuri HASEGAWA, Kiyonori MIURA, Ai HIGASHIJIMA, Shuhei ABE, Atsushi YOSHIDA, Masako MASUZAKI, Hideaki MASUZAKI

長崎大学産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Nagasaki University

キーワード :

【目的】
全胞状奇胎と部分胞状奇胎は奇胎娩出後の続発性侵入奇胎や絨毛癌の発生率に大きな違いがあるにもかかわらず(続発性侵入奇胎は全奇胎の10から20%,部分奇胎の2から4%,絨毛癌は全胞状奇胎の1から2%),画像的に両者を鑑別することは非常に困難である.そのため最終診断は病理学的に行われることが多い.当科では術前診断および病理学的な診断に加え,患者および配偶者の同意が得られた症例については遺伝子診断を行っている.今回,術前の超音波診断,術後検体(子宮内掻爬および子宮全摘術による嚢胞化絨毛)の病理組織診断および遺伝子診断について検討したので報告する.
【対象と方法】
2013年から2017年までに当科を受診し,全胞状奇胎,部分胞状奇胎および共存奇胎と診断した15例を対象とした.15例のうち遺伝子解析について患者および配偶者の同意を得られたのは12例であった.術前の超音波診断,術後の病理学的診断と遺伝子診断について検討した.遺伝子診断は子宮内容除去術もしくは子宮全摘術によって得られた嚢胞化絨毛,患者および配偶者の血液からDNAを抽出し,STR-PCR法により解析を行った.
【結果】
12例のうち共存奇胎が疑われたのは2例,全胞状奇胎と診断されたのは8例,部分胞状奇胎と診断されたのは2例であった.病理診断で7例が全胞状奇胎,5例が部分胞状奇胎と診断された.病理診断で部分胞状奇胎と診断された2例は遺伝子型解析では全胞状奇胎と,病理診断で全胞状奇胎と診断された1例は遺伝子型解析では部分胞状奇胎と診断された.病理診断で部分胞状奇胎と診断された症例は免疫染色のp53kip2が陽性であった.術前超音波診断,術後病理診断および遺伝子診断が全て一致したのは4例のみであった.
【結語】
術前の超音波診断による全胞状奇胎と部分胞状奇胎の鑑別は非常に困難であった.ガイドライン上,最終診断は病理診断(免疫染色を含む)が推奨されているが,全胞状奇胎と部分胞状奇胎の鑑別には病理学的検索に加え,遺伝子診断が有用であると考えられた.