Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
絨毛疾患・産後出血

(S713)

帝王切開後の経腟超音波断層法による子宮の縦径や体積と帰室後出血量の関連性

Are there relationships between amount of bleeding after cesarean deliverywith 3D transvaginal ultrasonography measurement of uterus ?

稲岡 直子, 山下 亜貴子, 松下 充, 加藤 恵一朗, 寺田 周平, 今野 寛子, 鈴木 貴士, 松本 美奈子, 村越 毅

Naoko INAOKA, Akiko YAMASHITA, Mitsuru MATSUSHITA, Keiichirou KATO, Syuhei TERADA, Hiroko KONNO, Takashi SUZUKI, Minaoko MATSUMOTO, Takeshi MURAKOSHI

聖隷浜松病院周産期科

Division of Obstetrics and Perinatology, Seirei Hamamatsu General Hospital

キーワード :

【目的】
帝王切開後に手術室では異常出血を認めずに,帰室後のスタッフによる術後管理中に弛緩出血や子宮復古不全による大量出血を認め,緊急での医療的介入を要することがある.
 これまでの研究では,経腟分娩や帝王切開において分娩後数日経ってからの経腟超音波断層法や経腹超音波断層法で評価した子宮内腔の貯留量が最も分娩後の出血量を予想し得たといった報告や分経後24時間以内に経腹超音波断層法で評価した子宮の体積と径は分娩後出血とは関係しないといった報告はあるが,分娩直後の子宮の縦径や体積と分娩後出血の関係に関する報告はない.
 今回,帝王切開終了直後の経腟超音波断層法で子宮全体の縦径や体積を計測することによって,帰室後の弛緩出血や子宮復古不全による出血の増量を予測できないか検討した.また,母体背景や分娩管理の因子も併せて検討した.
【対象】
 2017年2月から2017年5月までに当院にて妊娠37週以降に子宮下部横切開で帝王切開術を施行した症例のうち子宮体積に影響を与え子宮筋腫合併妊娠や子宮奇形,出血量の影響を与える前置胎盤や常位胎盤早期剥離を除外した21例を対象とした.
【方法】
 手術終了直後に手術台の上で経腟超音波断層法を用い,縫合糸を目印にして子宮を子宮頸部側と子宮底部側に分けて計測をおこなって縦径と体積を算出した.それらと母体背景や分娩管理における様々な因子が帰室1時間までの出血量,帰室2時間までの出血量と関連するかを検討した.
 統計学的手法は,Fisherの直接法を用いて,p値<0.05を有意差ありとした.
【結果】
 帰室1時間までの出血量や帰室2時間までの出血量と子宮の縦径や体積の間に明らかな関係は認めなかった.母体背景として妊娠高血圧症候群を有する母体や分娩経過で陣痛促進を要した母体は帰室1時間,2時間までの出血量が共に有意に多かった.また,BMI≧35の母体は帰室1時間,2時間までの出血量が多くなる傾向があり,分娩誘発を要した母体は帰室1時間までの出血量が多い傾向があり,BMI≧30の母体や耐糖能異常を有する母体は帰室2時間までの出血量が多い傾向にあった.
【結論】
 帰室後の出血量と妊娠高血圧症候群やBMI≧30などの母体背景,陣痛促進,分娩誘発などの分娩経過との関係は認められたが,帝王切開終了直後の経腟超音波断層法による子宮の縦径や体積の計測値からの帰室後の出血量の予測は困難であった.
 また,今回は対象症例数が少ないため,研究を継続して対象症例を増やし,再度検討することによって子宮の縦径や体積と帰室後の出血量のより正確な関係を導くことができるかもしれない.