Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児治療 他

(S707)

胎児徐脈性不整脈に対し母体へβ刺激薬投与を行った4症例

Four cases in which maternal administration of beta stimulant was administered to fetal bradyarrhythmia

馬淵 亜希, 田中 佑輝子, 藁谷 深洋子, 中川 由美, 北脇 城

Aki MABUCHI, Yukiko TANAKA, Miyoko WARATANI, Yumi NAKAGAWA, Jo KITAWAKI

1京都府立医科大学附属病院産婦人科, 2京都府立医科大学附属病院小児科

1Obstetrics and Gynecology, University Hospital Kyoto Prefectural University of Medicine, 2Pediatrics, University Hospital Kyoto Prefectural University of Medicine

キーワード :

【目的】
胎児徐脈性不整脈は稀な疾患で,心構造異常や胎児水腫を合併すると予後不良と言われている.2010年から2017年の7年間に,児心拍上昇を目的として母体β刺激薬投与を行った胎児徐脈性不整脈の症例を報告する.
【症例】
①32歳,初産婦.妊娠25週に胎児徐脈性不整脈を指摘され当院紹介.心構造異常は認めず,完全房室ブロック(CAVB)と診断した.胎児心拍60台であり,β刺激薬内服開始した.その後の精査結果母体抗SS-A抗体が陽性であり,心内膜線維弾性症予防目的に妊娠26週よりプレドニゾロン内服も開始した.その後胎児心拍は90台まで回復し,心拡大や胎児水腫の出現なく経過した.妊娠38週0日帝王切開施行し,児は2498g,女児,Ap8/9で,出生後の診断もCAVBであった.現在6歳になるが,CAVBは継続しておりペースメーカー留置を検討されている.
②29歳,1経産.妊娠26週に胎児徐脈性不整脈と内臓錯位を指摘され当院紹介.心臓構造異常は左側相同,単心房,共通房室弁,下大静脈(IVC)欠損,両大血管右室起始症(DORV),肺動脈弁狭窄(PS)を認め,CAVBと診断した.児心拍90~100台であったが,妊娠31週に60台になりβ刺激薬点滴を開始した.妊娠34週に児心拍80台へ上昇し,心拡大や胎児水腫への進行は認めなかった.妊娠37週4日帝王切開施行し児は2820g,男児,Ap7/7で出生した.生後3ヶ月目にペースメーカー留置,2歳1ヶ月でTCPC施行され,現在5歳である.
③35歳,1経産.妊娠22週に胎児徐脈性不整脈と内臓錯位を指摘され当院紹介.心構造異常は左側相同,房室中隔欠損,IVC欠損を認め,洞不全症候群と診断した.来院時は児心拍80台であったが,妊娠30週時に児心拍50台,心嚢液貯留,腹水貯留を認め,β刺激薬点滴を開始した.妊娠31週に児心拍80台に上昇したが,CAVBへ進展した.妊娠33週0日に胎児水腫となり緊急帝王切開を施行し,児は1988g,男児,Ap5/7で,出生後の診断もCAVBであった.生後2日目に体外ペーシング留置されたが,腹水貯留が遷延し感染と循環不全のため生後124日目に永眠された.
④38歳,1経産.妊娠28週に胎児徐脈性不整脈と胎児心構造異常を指摘され当院紹介.心構造異常は左側相同,単心房,共通房室弁,IVC欠損,DORV,左室低形成,PSを認め,CAVBと診断した.児心拍50台であり,β刺激薬点滴を開始した.その後一過性に胎児心拍数は5程度上昇認めたが概ね50台で経過した.妊娠33週,胎児水腫へ進展し緊急帝王切開を施行した.児は2394g,男児,Ap4/4で出生し,出生後徐脈が著しく同日体外ペーシング留置した.その後も右室の収縮障害・拡張障害が著しく,生後72日目に永眠された.
【考察】
胎児徐脈性不整脈の症例にβ刺激薬を投与することにより全例児心拍は上昇し,母体の重症合併症は認めなかった.しかし,経過中に胎児水腫を合併する症例は予後不良であり,β刺激薬が有効かどうかは不明であった.今後症例をかさねて検討する必要がある.