Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
婦人科腫瘍

(S705)

子宮体癌ⅠA期に肝MALTリンパ腫を合併した重複癌症例における超音波検査の有用性

A case of double cancer of uterine endometrial cancer and liver MALT lymphoma.

仲尾 岳大, 東 裕福, 長谷川 怜美, 小林 理, 春日 晃子, 千島 史尚, 高田 眞一, 小松 篤司, 川名 敬

Takehiro NAKAO, Hiromitsu AZUMA, Remi HASEGAWA, Osamu KOBAYASHI, Akiko KASUGA, Fumihisa CHISHIMA, Shinichi TAKADA, Atsushi KOMATSU, Kei KAWANA

日本大学医学部産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Nihon University School of Medicine

キーワード :

【緒言】
肝臓は子宮体癌の転移好発部位であり,肝腫瘤を認めた場合は肝臓原発腫瘍か転移性腫瘍の鑑別を要する.肝臓腫瘍の質的診断に超音波検査は簡便であり一般的に用いられている.我々は子宮体癌ⅠA期に肝腫瘍を認め,術前の超音波,CT,MRIより管内胆管癌または転移性腫瘍を考慮したが,摘出後に肝臓MALTリンパ腫と診断された1例を経験したので報告する.
【症例】
69歳3妊3産,特発性血小板減少性紫斑病の既往があり血液内科に通院していた.不正性器出血を主訴に当科を受診した.子宮内膜生検において類内膜癌G1,骨盤部MRIにおいて内膜8mm厚,筋層浸潤の所見を認めず子宮体癌ⅠA期相当であった.全身検索のための造影CTにて,肝S3区域に腫瘤を認め,PET-CT検査でも同部位に有意な集積を認めた.肝臓超音波検査を行い,14mm径,類縁系,境界明瞭な腫瘤を認めた.辺縁の低エコーなく内部は低で均一,後方エコーは軽度増強した.辺縁に微細な血流を認めるが内部血流は描出できなかった.造影超音波では動脈相において淡く均一に造影され,門脈相にかけて造影効果は低下,後血管相では欠損を認めた.Dynamic CTでは造影超音波と同様に動脈相で弱く造影された後,門脈相,平衡相にかけ造影効果の低下を認めた.EOBを用いたMRIでは造影早期から肝細胞造影相にかけて低信号であった.これらの所見より,転移性腫瘍または管内胆管癌が否定できないことから肝腫瘤の外科的摘出とした.病理組織診断はMALTリンパ腫であった.子宮体癌ⅠA期と診断確定し当科で子宮体癌根治手術を施行した.病理組織診断は類内膜癌G1,pT1aN0M0であった.現在も再発なく経過している.
【考察】
肝MALTリンパ腫はリンパ節外悪性リンパ腫の約0.5%と非常に稀な腫瘍である.症例の蓄積も乏しく腫瘍摘出後に診断される例が多い.本症例ではCT,MRI,PET検査を統合するとリンパ腫を疑う所見がなかったのに対して,超音波検査では後方視的にリンパ腫を否定できない所見を認めていた.術前診断が極めて困難なMALTリンパ腫の画像所見としては超音波検査が最も推定し得ていた.本症例で肝腫瘍摘出は診断確定上不可避ではあったが超音波検査が質的診断に寄与することが確認された.
【結論】
子宮体癌ⅠA期と肝MALTリンパ腫の重複癌を経験した.質的診断において,超音波検査が有用であることが示唆された.