Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
婦人科腫瘍

(S705)

SMIとSWEを用いた卵巣腫瘍の悪性診断に関する検討

Ultrasound evaluation for malignant ovarian tumor using SMI and SWE

原田 賢, 吉岡 範人, 今井 悠, 長谷川 潤一, 鈴木 直

Satoshi HARADA, Norihito YOSHIOKA, Haruka IMAI, Junichi HASEGAWA, Nao SUZUKI

聖マリアンナ医科大学病院産婦人科学

Department of Obstetrics and Gynecology, St.Marianna University School of Medicine

キーワード :

【緒言】
Superb-microvascular imaging(SMI)はモーションアーチファクトを大幅に減らすことで,微細で低流速の血流を捉えて画像化することを可能にしたカラードプラ超音波である.また,Shear Wave Elastography(SWE)は,剪断波が伝播する速度から組織の硬さを定量的に評価することのできる新しい方法である.SMIやSWEの婦人科腫瘍へ応用した報告はない.今回我々は,新しい超音波技術であるSMIやSWEを用いて,卵巣がんの評価を行った症例を報告する.
【症例】
症例は81歳,2妊,2産.骨盤内に約10cm大の腫瘤性病変が認められたため当院へ紹介受診となった.20年前に術後創部腹壁瘢痕ヘルニアにてメッシュ挿入術が施行された.来院時の超音波断層法では135×75mmの骨盤内腫瘤が認められ,辺縁は整で内部は不均一であった.その一部に35mm大の充実性部分があり,内容は漿液性の液体が疑われ,超音波上は漿液性腺がんが疑われた.通常のカラードプラではその充実性部分に明らかな血流は認められなかったが,SMIで観察すると微細な血流が豊富であることが明らかとなった.さらに骨盤内腫瘤全体を3DのSMIで評価すると,充実性部分の周囲に豊富な血流がみられることが分かった.充実性部分をSWEで評価すると,硬度の低い部分が大半であったが,一部に硬度の高い部分が認められ,均一な構造でないことが明らかとなった.以上より,卵巣がんの可能性が高いと判断し,ステージングラパロトミーを考慮したが,年齢が高齢であること,開腹既往が数回にわたっていること,腹壁瘢痕ヘルニアでメッシュが挿入されていたことから,縮小手術を行うこととした.開腹所見は切開創に腸管の癒着が高度であり,また腹膜直下にメッシュが挿入されていた.しかし,高度の癒着とメッシュによる開腹創の延長が困難であったため,両側付属器切除のみで手術は終了された.骨盤内に播種性病変は認められず,卵巣がんⅠC期(pT1CNXM0)と診断された.術後はご本人の希望により追加治療は施行されず,外来にて再発管理が行われている.
【結語】
卵巣腫瘍の超音波診断において,SMIによる腫瘍内や周囲の微細血流や,SWEによる充実性腫瘍の軟硬混合した像を得ることが,悪性卵巣腫瘍の朮前診断の一助になる可能性があると考えられた.