Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
婦人科腫瘍

(S704)

充実成分および隔壁成分を有する子宮内膜症性嚢胞における超音波所見の特徴

A study of Evaluation of Ovarian Endometrial Cysts with solid parts and partition wall by Ultrasound Findings

長島 克, 鷹野 真由実, 谷口 智子, 三塚 幸夫, 石田 悠里花, 丸山 憲一, 土屋 雄彦, 片桐 由起子, 中田 雅彦, 森田 峰人

Masaru NAGASHIMA, Mayumi TAKANO, Tomoko TANIGUCHI, Yukio MITSUZUKA, Yuriko ISHIDA, Kenichi MARUYAMA, Takehiko TSUTIYA, Yukiko KATAGIRI, Masahiko NAKATA, Mineto MORITA

1東邦大学大学院医学研究科産婦人科学講座, 2東邦大学大学医療センター大森病院産科婦人科学講座, 3東邦大学大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部

1Department of obstetrics and gynecology, Toho University Graduate School of Midicine, 2Department of obstetrics and gynecology, Toho University Omori Medical Center, 3Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Omori Medical Center

キーワード :

【目的】
 漿液性嚢胞や成熟嚢胞性奇形腫などの良性卵巣腫瘍では,術前の画像診断で良悪の鑑別は比較的容易であるが,卵巣子宮内膜症性嚢胞を疑う症例では,しばしば良悪の鑑別に苦慮する.卵巣腫瘍の良悪性を予測する指標の1つとして,エコーパターン分類(JSUM分類)が用いられるが,その診断精度は十分ではない.
 また近年,卵巣子宮内膜症性嚢胞の発生頻度の増加に伴い,卵巣子宮内膜症性嚢胞に卵巣癌を合併する症例の診断と,その診断に基づく治療の決定が臨床上重要となる.
 そこで,術前画像検査にて,腫瘍内に充実成分もしくは隔壁を有し,子宮内膜症性嚢胞もしくは卵巣悪性腫瘍を疑った症例において超音波検査所見の違いを検討した.
【方法】
 2009年1月~2013年12月に当院で卵巣腫瘍を摘出し,術前に超音波検査で腫瘍内に充実成分もしくは隔壁を有し,卵巣子宮内膜症性嚢胞もしく卵巣悪性腫瘍を疑った164症例173腫瘤(複数手術例を含む)を対象として後方視的に検討を行った.超音波検査所見として,腫瘍径,腫瘍内の血流の有無とその局在を検討した.
【結果】
 対象のうち,術後永久標本で卵巣子宮内膜症性嚢胞の診断となったものが64腫瘤(良性群),悪性卵巣腫瘍が109腫瘤(悪性群)だった.JSUM分類各型における検討では,良性群vs悪性群で,Ⅰ型:3(50%)vs 3(50%),Ⅱ型:31(71%)vs 7(18.4%),Ⅲ型:2(40%)vs 3(60%),Ⅳ型: 20(32%)vs72(78%),Ⅴ型: 7(25%) vs 22(75%),Ⅵ型:1(33%)vs 2(67%)であり,Ⅲ型以降で悪性腫瘍の割合が多かったが,Ⅰ,Ⅱ型でもそれぞれ50%, 18%に悪性腫瘍を認めた.
 年齢は,良性群で中央値38歳(21-61歳),悪性群で55歳(16-90歳)であり,有意に良性群で若年だった(p <0.05).腫瘤最大径は,良性群で中央値9cm(5-19cm),悪性群15cm(3-40cm) と有意に悪性群で腫瘤径が大きかった(p <0.05).腫瘍内に血流を認めた症例は,良性群で16/64腫瘤(25%)で,悪性群73/109腫瘤(67%)であり,有意に悪性群で多かった(p <0.05).腫瘍内に血流を認めた症例において,充実部に血流を認めた症例は47/50腫瘤(94%)に悪性腫瘍を認めたのに対し,隔壁部に血流を認めた症例では17/30腫瘤(57%)であり,充実部に血流を有する症例において有意に悪性腫瘍が多かった(オッズ比11.9, 95% CI 3.0-47.3, p<0.05).多変量解析において悪性腫瘍に寄与する所見として,充実部に血流を認める場合(オッズ比7.9, 95% CI 1.5-40.7)と腫瘤最大径(オッズ比1.2, 95% CI1.0-1.4)が抽出された.
【考察】
充実成分および隔壁成分を有する卵巣子宮内膜症性嚢胞において,充実部に血流が存在する症例,腫瘍径が大きい症例では悪性腫瘍の可能性を念頭に管理する必要があると考えられた.卵巣子宮内膜症性嚢胞では,血流の有無に加えて,血流の充実部への局在が有用な所見であると考えられた.