Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
びまん性肝疾患 2

(S700)

Superb Micro vascular Imaging (SMI)を用いた肝表面直下の血管構築評価の試み

Assessment of the vascular shapes with superb microvascular imaging in chronic liver diseases

打田 佐和子, 菊川 佳菜子, 河田 則文

Sawako UCHIDA-KOBAYASHI, Kanako KIKUKAWA, Norifumi KAWADA

大阪市立大学大学院医学研究科肝胆膵病態内科学

Department of Hepatology, Osaka City University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景・目的】
慢性肝疾患では,線維化の進行および肝小葉改築に伴い,門脈,動脈,静脈の増生や走行変化,屈曲蛇行が生じ,血管構築は著明に変化する.また,炎症,うっ血,出血では,それのみで血管形態に変化が生じる.すなわち,血管構築の変化を解析することにより肝疾患の病因や進展度を診断できる可能性がある.しかしながら,これら微細な血管構築の変化は拡大腹腔鏡などでのみ可視化される変化であり,従来のカラードプラ技術では詳細に観察することは困難であった.近年,超音波技術の進歩により,肝臓においては肝表面直下の非常に微細な末梢血管まで視認性よく描出できるようになった.今回我々は,各種慢性肝疾患患者に対して,微細かつ低流速の血流を描出できる超音波血流イメージング法であるSuperb Micro vascular Imaging (SMI)を用いた肝表面直下の血管構築評価を試み,健常人と比較検討した.
【方法】
対象は2017年11月末までに当院でSMIを用いて肝内を観察したC型慢性肝疾患59例(C群),B型慢性肝疾患12例(B群),原発性胆汁性胆管炎13例(PBC群),自己免疫性肝炎4例(AIH群),その他肝疾患7例(others群)および肝疾患を有さない健常ボランティア12例(N群).超音波装置は東芝メディカルシステムズ株式会社社製Aplio500,探触子はPLT-704SBT(中心周波数7.5MHz)を用いた.仰臥位で肝実質が広く描出される右肋間から肝右葉を観察した後,monochrome SMI(mSMI)に切替え,呼吸停止の状態で一定の速度で扇動走査を行い,加算画像を撮像した.連続した血管が5本以上描出されるフレームを解析画像とし,肝右葉表面1cm以内に描出される血管のうち任意に5本を選択し,それぞれ血管の始点から終点までのトレースレングス計測と,始点から終点を結ぶ直線距離を計測した.屈曲蛇行の程度は屈曲蛇行係数=(血管の長さ)/(血管の始点と終点を結ぶ直線距離)として5本の平均値を算出した.本研究は当院倫理委員会の承認を得て行った.
【結果】
いずれの疾患においても,素早く簡便に肝表面近傍1cmの微細な血管が明瞭に描出でき,mSMI加算画像が撮像できた.健常人と比較して,慢性肝疾患を有する患者,特に肝硬変患者では,血管の屈曲蛇行,細血管の増生,多分枝化,径の不整や枯れ枝様の像などがみられた.各疾患群における肝表面直下の血管の屈曲蛇行係数は,C群 1.12±0.04,B群 1.13±0.04,PBC群 1.12±0.03,AIH群 1.08±0.02,others群 1.11±0.02であり,AIH群以外はいずれもN群 1.08±0.02より有意に高値であった(P<0.01).
【考察・結論】
SMIを用いた観察により,素早く簡便に肝表面直下の微細な血管が明瞭に描出でき,その加算画像により血管形態を評価することができた.健常人と比較して,C型およびB型慢性肝疾患,PBCおよびその他肝疾患では有意に肝表面直下の血管は屈曲蛇行していた.SMIを用いた肝表面直下の血管構築評価により慢性肝疾患を有する患者の拾い上げが可能であることが示唆された.