Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
びまん性肝疾患 1

(S697)

C型慢性肝疾患のFlash Replenishment sequence における飲酒の影響

Alcohol Consumption and Flash Replenishment sequence in Type C Liver disease

和久井 紀貴, 永井 英成, 吉峰 尚幸, 天沼 誠, 荻野 悠, 松清 靖, 篠原 美絵, 丸山 憲一, 住野 泰清, 五十嵐 良典

Noritaka WAKUI, Hidenari NAGAI, Naoyuki YOSHIMINE, Makoto AMANUMA, Yu OGINO, Yasushi MATSUKIYO, Mie SHINOHARA, Kenichi MARUYAMA, Yasukiyo SUMINO, Yoshinori IGARASHI

1東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 2東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部, 3JCHO東京蒲田医療センター消化器内科

1Division of Gastroenterology and Hepatology, Toho University Omori Medical Center, 2Division of Clinical Functional Physiology, Toho University Omori Medical Center, 3Department of Gastroenterology and Hepatology, Japan Community Health Care Organization (JCHO) Tokyo Kamata Hospital

キーワード :

C型慢性肝疾患における肝実質病変の進展度診断のgold standardは肝生検による病理組織所見とされている.しかし,肝生検は侵襲的であるため,近年超音波などを利用した様々な非侵襲的手法の開発が進み,その精度も向上してきている.2007年より臨床導入された超音波造影剤SonazoidTMは,kupffer細胞に取り込まれやすい特性を持つことから,肝腫瘍の性状診断に利用されている.我々はこれをびまん性肝疾患の肝線維化診断に応用し,造影US後血管相におけるFlash Replenishment sequence(FRS)によるmicro bubble(MB)崩壊の程度が肝組織病変の進展度評価へ有用なことを報告した(JDDW2017).しかし,飲酒がMB崩壊の程度にどのような影響を与えるかについては検討の余地が残されている.
【目的】
飲酒が,造影US後血管相におけるFRSによるMB崩壊に及ぼす影響を明らかにする.
【対象と方法】
約6年間に当院で造影USを施行したC型慢性肝疾患122例.内訳は,年齢が20~83歳(平均58.9歳)で,男性68例,女性54例.慢性肝炎はすべて超音波検査後に,肝生検で線維化診断を行った.また,肝硬変は病理組織学的に,またはCTや超音波検査等の画像所見で診断した.超音波装置はAplioXG,探触子はコンベックス型の3. 75 MHz を使用した.超音波造影剤は0. 015 ml/kg のSonazoidTMを用い,肘静脈からbolus 静注した後,生理食塩水10ml で注入した.検査は早朝空腹時に行い,肝右葉S5 を肋間走査で描出し,造影剤投与後10 分の後血管相(Kupffer phase)を観察した.画面サイズは肝右葉が全て描出出来るように調整し,focus point は6cm に設定した.FRS の条件はmechanical index 1.6,beam 送信数30 回で行った.これを用いて超音波スキャンボリューム内のbubble を崩壊させ,肝表面からMB が崩壊した距離を測定した.次に超音波検査施行後に各MB崩壊距離と肝生検所見(F因子)を対比した.飲酒量の調査は,US施行時またはUS前後の外来診察時に本人より聴取した.機会飲酒症例またはエタノール換算29g/日以下のものを飲酒なし群,エタノール換算30g/日以上を飲酒あり群と定義した.なお,本研究は当院倫理委員会の承認を得ている.
【結果】
全症例に対するSonazoid bubbleの崩壊距離は,F0-1:46.6±14.1mm,F2:41.7±13.2mm,F3:48.3±10.6mm,F4:56.6±19.1mmであった.飲酒なし群のみでは,F0-1:40.4±8.0mm,F2:36.1±7.0mm,F3:45.5±8.9mm,F4:57.1±21.6mmで,F1とF4,F2とF3, F2とF4の間に有意差を認めた(P<0.01).飲酒あり群では,F0-1:54.3±16.3mm,F2:54.1±15.6mm,F3:56.4±11.8mm,F4:54.5±5.5mmであり,各ステージで有意な差は認めなかった.飲酒の有無における崩壊距離の検討では,飲酒あり群の方が,飲酒なし群に比し有意な崩壊距離の増加を認めた(P<0.001).
線維化ステージ別の検討では,飲酒あり群が飲酒なし群に比し,F1とF2症例において有意な崩壊距離の増加を認めた.しかしながらF3およびF4症例においては有意差を認めなかった.
【考察】
C型慢性肝炎の病期進展にともない,SonazoidTM崩壊距離が増加する原因は,病期進展に伴うkupffer細胞機能の低下や数の減少などの要因が考えられた.また飲酒あり群はなし群と比べて有意にその距離が増加する結果であったことから,アルコールがKupffer細胞の数または機能を低下させることにより崩壊距離へ影響を与える可能性が考えられた.
【結語】
飲酒が,C型慢性肝疾患におけるSoazoidTM造影US後血管相のMB崩壊距離を増加させることが明らかとなった.