Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
びまん性肝疾患 1

(S696)

原発性胆汁性胆管炎で見られる網目様所見WNA(wire netting appearance)についての検討

Sonographic Appearance of Primary Billary Cholangitis, The“ Wire Netting Appearance ”

荻野 悠, 和久井 紀貴, 向津 隆規, 松清 靖, 篠原 美絵, 池原 孝, 丸山 憲一, 住野 泰清, 永井 英成, 五十嵐 良典

Yuu OGINO, Noritaka WAKUI, Takanori MUKOUTSU, Yasushi MATSUKIYO, Mie SHINOHARA, Takashi IKEHARA, Kenichi MARUYAMA, Yasukiyo SUMINO, Hidenari NAGAI, Yoshinori IGARASHI

1東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 2東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査室, 3JCHO東京蒲田医療センター

1Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Internal Medicine, Toho University Medical Center, Omori Hospital, 2Division of clinical laboratory, Toho University Medical Center, Omori Hospital, 3Gastroenterology, JCHO Tokyo Kamata Medical Center

キーワード :

【はじめに】
慢性肝疾患の肝実質超音波像の特徴について,成因別の検討はあまりされていない.以前,竹内らはB型肝硬変の超音波所見の特徴像として,肝実質に小網目状のエコーが目立つメッシュパターンを提唱した.我々の施設の経験では,上記のメッシュパターンによく似た所見を原発性胆汁性肝硬変(PBC)の患者にも一定の割合で見られることを経験しており,この網目状の所見をwire netting appearance(金網状:WNA)と呼び,日常の臨床で用いている.
【目的】
WNAがPBCに特徴的な所見であるどうかを明らかにする.またWNAが各種採血項目(ALT,T-Bil,Alb,血小板)や門脈圧亢進症などと関連があるか明らし,さらにWNAを呈する原因を病理組織学的に解明する.
【対象と方法】
2010年4月から2015年3月までに当施設で臨床的診断および肝生検でPBCと診断された105例(男性25例,女性80例,年齢平均65歳).装置は東芝社製AplioXG,3.5MHzコンベックスプローブを使用し,肝生検前に腹部超音波検査を行った.肋弓下横走査で肝臓をスイープスキャンし動画を記録.20年目と40年目の超音波専門医の二人が患者背景をブラインドした形で評価し,二人の評価者の意見が一致したものをwire netting appearance(WNA)陽性とした.WNAの定義は肝内部エコーが粗く不整で網目状を示し,メッシュパターンの網よりもさらに大きく格子状のものとした.病理学的評価は原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイドライン(2012年)で用いられている中沼らが報告した分類を使用した(A:
病期(stage1-4),B:線維化(score0-3),C:胆管消失(score0-3),D:胆管炎の活動性(CA0-3),E:肝炎の活動性(HA0-3)).病理診断A-Eの各項目とWNAの関連性について検討を行った.
【成績】
PBC 105例中30例(28.6%)にWNAを認めた.病理学的検討をしたPBCは33例であった.
肝硬変例16例中14例,非硬変例89例中17例でWNAを認め有意に肝硬変例でWNA陽性が多い結果であった.全症例でWNA陽性群とWNA陰性群に分けて,ALT,T-Bil,Alb,血小板,脾腫の有無,静脈瘤の有無について比較したが有意差は認めなかった.
次に,非硬変例の中でWNA陽性群とWNA陰性群に分けて,同様に比較したところ,Alb,血小板はWNA陽性群の方がWNA陰性群と比べて有意に低い結果であった(P=0.049, 0.043).病理学的検討を行った33症例(WNA陽性8例,WNA陰性25例)の内訳は,Aは1:6例,2:16例,3:10例,4:1例.Bは0:13例,1:12例,2:7例,3:1例.Cは0:7例,1:15例,2:11例,3:0例.Dは0:8例,1:9例,2:10例,3:6例.Eは0:10例,1:6例,2:10例,3:7例であり,各群間でWNA陽性率は,Aは1:33%,2:7.6%,3:30%,4:100%.Bは0:23%,1:16.7%,2:28.6%,3:100%.Cは0:28.5%,1:20%,2:27.2%.Dは0:50%,1:22%,2:20%,3:0%.Eは0:50%,1:0%,2:20%,3:14.3%であった.
各群間でWNA陽性率を比較した結果,WNA陽性率は,Aではstage2と比べstage4で有意に多く,Bではscore1と比べscore3で有意に多く,Dでは,score3と比べてscore0で有意に多く,Eではscore1と比べてscore0で有意に多かった.以上より胆管炎や肝炎の活動性がない方が,活動性がある症例よりもWNAを有する結果であった.
【考察】
PBCの中でWNAを呈する症例は28.6%にあることが明らかになった.非硬変例と比べて肝硬変例で有意にWNAが多く,非硬変例の中ではWNA陰性群に比べてWNA陽性群でAlbと血小板は低い結果であったことから,病変が進行したPBCによりWNAを有する可能性が示唆された.また病理学的に検討が行えた33例において,胆管炎や肝炎の活動性がないことがWNA陽性の条件の一つであることが考えられた.