Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
胆道/消化管

(S695)

腹腔鏡下手術後に発見された特徴的な超音波像を呈した肝内気腫の1例

A case of intrahepatic emphysema after laparoscopic surgery revealed the distinctive ultrasonographic image

安江 智美, 大川 和良, 三栖 弘三, 松野 徳視, 西浦 明穂, 野口 真那, 名和 誉敏, 榊原 充, 片山 和宏

Tomomi YASUE, Kazuyoshi OHKAWA, Kouzou MISU, Noritoshi MATSUNO, Akiho NISHIURA, Mana NOGUCHI, Takatoshi NAWA, Mitsuru SAKAKIBARA, Kazuhiro KATAYAMA

1大阪国際がんセンター臨床検査科, 2大阪国際がんセンター肝胆膵内科

1Department of Clinical Laboratory, Osaka International Cancer Institute, 2Department of Hepatobiliary and Pancreatic Oncology, Osaka International Cancer Institute

キーワード :

【はじめに】
腹腔鏡下手術に起因する偶発症や合併症として種々の報告がある.今回,我々は腹腔鏡下手術後に肝機能障害を生じ,精査目的で施行した超音波検査にて肝内気腫を呈した一例を経験したので報告する.
【症例】
50代女性.5年前に子宮頸部異形成に対して円錐切除,1年前にレーザー治療を施行されていた.また,2年前に胃癌に対して胃全摘術および胆嚢摘出術も施行されていた.術前検査では,貧血(Hb 10.4g/dL)と肝機能異常(AST 37U/L, ALT 61U/L)を認めた.肝機能異常に関しては,HBs抗原,HCV抗体ともに陰性であり,飲酒歴(2合/日)があることからアルコール性と考えられた.今回,子宮頸部異形成の再発に対して,腹腔鏡下膣式子宮全摘術,両側卵管切除術を施行した.術中術後の経過は良好であったが,術後1日目に肝機能のさらなる上昇を認めた(AST 405U/L, ALT 348U/L, γ-GTP 93U/L, T-Bil 0.7mg/dL).精査目的で施行した超音波検査では,肝腫大,脾腫,肝内胆管拡張や肝腫瘤といった異常所見は認めなかったが,肝両葉に不均一に分布する高輝度点状エコーを多数認めた.肝内に存在する気腫と考えられたが,胆管や脈管の走行とは一致しておらず,胆管気腫や門脈内ガスは否定的であった.同日施行の腹部造影CT検査では,臍周囲の気腹部位から肝鎌状間膜を経て肝表面や肝門部周囲にair像を認め,さらに肝門部を中心に肝内にかけて樹枝状に分布するair像を認めた.特に加療を要せず,肝機能は術後2日目にAST 81U/L, ALT 187U/L,4日目にAST 42U/L, ALT 101U/Lと改善した.
【考察】
本症例ではエコー上,胆管や門脈の走行と異なる肝内点状高エコー像を認めた.前日に腹腔鏡下子宮全摘術を施行したことも考慮し,気腹操作と関連した肝内気腫の可能性が示唆された.CT所見でのairの分布から考えると,臍の気腹部から肝鎌状間膜を通じて肝周囲,肝門部,肝内へと気腹時の炭酸ガスが圧入されたことにより,肝内末梢にまでairが入り込み,超音波検査では点状の高輝度エコーとして観察しえたと考えられた.同時に,肝組織が物理的に障害されたことで肝機能異常が惹起されたが,肝内に圧入された炭酸ガスは多くなく,速やかに吸収されて肝機能の改善に至ったと推察された.なお,本患者には胃癌の手術歴があり,これによる癒着のため合併症状が生じたと考えられた.
【結語】
腹腔鏡下手術後に気腹操作によって引き起こされたと考えられる,特徴的な超音波像を示した肝内気腫の一例を経験した.稀な症例と考えて報告する.