Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
胆道/消化管

(S693)

治療抵抗性胃食道逆流症患者の下腹部超音波検査で卵巣癌を認めた一例

A case of treatment-resistant gastroesophageal reflux disease complicated by ovarian cancer detected by lower abdominal ultrasonography.

服部 博明, 佐々木 祐一郎, 豊田 英樹, 吉田 麻奈美, 重親 涼子, 西 香織, 藤井 容子, 藤原 弘光, 村脇 義和, 杉原 誉明

Hiroaki HATTORI, Yuuichirou SASAKI, Hideki TOYODA, Manami YOSHIDA, Ryouko OMOSO, Kaori NISHI, Youko FUJII, Hiromitsu FUJIHARA, Yoshikazu MURAWAKI, Takaaki SUGIHARA

1済生会境港総合病院, 2ハッピー胃腸クリニック, 3鳥取大学医学部附属病院消化器内科

1Saiseikai Sakaiminato General Hospital, 2Happy GI Clinic, 3Department of gastroenterology, Tottori University Hospital

キーワード :

【はじめに】
胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)は主に酸性の胃内容物が食道や口腔内に逆流し,胸焼けや呑酸などの症状を呈する病態である.胃食道逆流症診療ガイドライン(2015)では診断に問診票,上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy:EGD)や食道内PHモニタリングが診断に有用との記載はあるが超音波検査(ultrasonography:US)は記載がない.これまで,治療抵抗性GERD患者に下腹部悪性腫瘍を認めた症例の報告があり,今回,われわれは治療抵抗性GERD患者に下腹部USを実施したところ卵巣癌を認めた一例を経験したので報告する.
【症例】
症例は80歳台女性.身長145cm,体重 47kg,BMI22kg/m2.既往歴:十二指腸潰瘍.軽度の萎縮性胃炎.Helicobacter Pylori除菌歴はない.十二指腸潰瘍に対してプロトンポンプ阻害剤(proton pump inhibitor:PPI)半量が継続処方されていた.今回の受診2年前に呑酸が出現し,治療抵抗性GERDと診断されて,PPI通常量が処方された.EGDではロサンゼルス分類Grade Nであった.その後,症状の改善と増悪を繰り返したため,今回,器質的疾患除外のために腹部USが施行された.上腹部に異常所見はなく,下腹部を観察したところ,卵巣に6.7×6.1cmの嚢胞部分と充実部分をもつ腫瘤を認め,MRI検査で右卵巣癌と診断された.産婦人科で右卵巣癌摘出術が行われた.消化器症状を有する患者に対するQOL問診票(出雲スケール)とFスケール(Frequency Scale for the Symptoms of GERD)問診票を用いて術前,術直後,術後2か月の3回GERD症状の評価を行った.
出雲スケールでは術前は胸焼け,腹部膨満感が中等度を示していたが,術直後,術後9週間では改善していた.Fスケールでは術前は酸逆流関連症状4点,運動不全症状7点,総合計11点(GERD疑い≧8点)で,術直後は点数に大きな変化を認めなかったが,術後2か月で酸逆流関連症状1点,運動不全症状1点,総合計2点と大きく改善していた.
【考察】
治療抵抗性GERD患者に下腹部悪性腫瘍を認めた症例の報告がある.本症例も,卵巣癌がGERD症状の原因であった可能性を疑い,出雲スケールとFスケールを用いて術前,術直後,術後2か月の3回,症状の評価を行ったところ術後2か月に症状の改善を認めた.
以上の結果より,卵巣癌の存在がGERD症状を誘発していた可能性が考えられた.その原因として豊田は下腹部悪性腫瘍が上部消化管の知覚過敏を誘発した可能性を推測している.
【結論】
今回,治療抵抗性GERD患者に卵巣癌の合併を認めた.治療抵抗性GERD症例に対する,下腹部USは有用と考えられた.