Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
胆道/消化管

(S692)

腹部超音波検査にて腺腫の境界を評価した虫垂粘液嚢胞腺腫の一例

A case report of low-grade appendiceal mucinous neoplasm with evaluated proximal margin by ultrasonography

久保 敦司, 河合 直之, 盛田 真弘, 大村 亜紀奈, 野田 晃代, 小川 力, 松中 寿浩, 玉置 敬之, 柴峠 光成

Atsushi KUBO, Naoyuki KAWAI, Masahiro MORITA, Akina OMURA, Teruyo NODA, Chikara OGAWA, Toshihiro MATSUNAKA, Hiroyuki TAMAKI, Mitsushige SHIBATOGE

高松赤十字病院消化器内科

Gastroenterology, Takamatsu Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
虫垂粘液嚢胞腺腫は虫垂内腔に粘液が貯留して嚢胞状に拡張した病態であり,大腸癌取扱い規約(第8版)では低異型度虫垂粘液産生腫瘍(Low-grade appendiceal mucinous neoplasm : LAMN)と分類されている.近年画像診断技術の進歩により術前診断されることが多くなったが,根治性を伴う術式に関しては未だ確立しておらず,また進展範囲を判断することも困難であることから切除断端をどのようにするかについては一定見解が得られていない.今回腹部超音波検査にて粘液貯留部位と正常虫垂部位を評価して腺腫の境界を推定して,虫垂開口部付近は正常粘膜であると術前診断した虫垂粘液嚢胞腺腫の症例を経験したので報告する.
【症例】
70代女性,胃透視検査異常を指摘され当科を受診した.自覚症状なし.既往歴無し.喫煙歴60本x40年.上部消化管検査では孤立性静脈瘤のみであった.同時に施行したスクリーニング目的の腹部超音波検査(GE社製LOGIC E9)にて膀胱右側に85x40mm大の棍棒状嚢胞性腫瘤を認めた.嚢胞内部はHigh-low混在の混濁を呈しており,移動性を認めたことから粘液貯留を伴う嚢胞性腫瘍と考えられた.嚢胞内の壁にはエコー上確認できるような乳頭上の増殖は認められず,嚢胞を追跡すると右外腸骨動脈を超えて外側では粘液貯留が消失して正常虫垂の壁構造となり,盲腸への連続性を確認できた.周囲のリンパ節腫大も認められなかったことから,開口部付近は正常粘膜である中部から盲端部に限局した虫垂粘液嚢胞腺腫と術前診断した.根治目的に待機的な腹腔鏡下盲腸部分切除を施行し,術後の経過は良好である.切除標本では虫垂は17.6x6.1x0.8cmと著明に腫大して,内部に粘液貯留を認めたが,虫垂壁の破綻はなかった.組織学的には虫垂壁は全層性に線維化がみられ,内腔側では盲端部には腫瘍粘膜が残存しており,粘液産生を示す軽度の核異型を伴った腫瘍細胞が鋸歯状に増殖していた.中部には広範に粘膜が脱落して組織球の集簇を認めるのみであった.一方開口部付近には正常虫垂粘膜が残存しており,術前の超音波検査所見と同等の結果であった.
【考察】
昨今腹部超音波検査の画像診断が向上して虫垂粘液嚢胞腺腫は術前されるようになった.嚢胞内腔の乳頭上の変化や周囲リンパ節の腫大により良悪性の鑑別基準は比較的明らかになってきている一方で,腺腫の境界を評価した報告は少ない.今回経験した症例を踏まえて今後虫垂粘液嚢胞腺腫に対する術前評価に腫瘍の境界評価が有用ではないかと考えられたことから若干の文献的考察を含めて報告する.