Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
膵臓/症例

(S691)

肝転移と膵原発巣を造影超音波で評価し得た膵solid-pseudopapillary neoplasmの1例

Contrast-enhanced ultrasonographic imaging of solid-pseudopapillary neoplasm with liver metastasis; A Case Report

鈴木 康秋, 上原 恭子, 久野木 健仁, 藤林 周吾, 芹川 真哉

Yasuaki SUZUKI, Kyouko UEHARA, Takehito KUNOGI, Syugo FUJIBAYASI, Shinya SERIKAWA

名寄市立総合病院消化器内科

Gastroenterology, Nayoro City General Hospital

キーワード :

【はじめに】
膵Solid-pseudopapillary neoplasm(SPN)は,膵腫瘍の1~2%と比較的稀な腫瘍であり,造影超音波の報告例は少ない.今回我々は,膵原発及び肝転移巣を造影超音波で評価し得た膵SPNの1例を経験したので報告する.
【症例】
40歳代・女性.心窩部痛を主訴に当科受診.右季肋部に巨大な腫瘤を触知し.腫瘍マーカーはCEA,CA19-9,AFP,SCCいずれも正常であった.CTでは膵頭部に不整な厚い被膜を有する径14cm大の嚢胞性腫瘍を認めた.腫瘍辺縁に淡い造影効果を伴う充実部を認め,一部に石灰化を認めた.主膵管の拡張は認めなかった.超音波では,膵頭部に凹凸不整で内腔に乳頭状の突出を有する高エコーの嚢胞壁に囲まれた嚢胞性腫瘤を認め,嚢胞内には微細点状高エコーとヒダ状エコーのゆらぎを認め出血が示唆された.一方,充実部はmixed pattern で一部に石灰化高エコーを認めた.造影超音波では充実部は良好に造影され,MFIでは細かな腫瘍血管を認めた.以上より膵SPNと考えた.巨大SPNであり,肝転移の報告もあるため,造影超音波の際にクッパー相で肝臓を観察したところ,1cm前後の造影欠損を数個認めた.Defect re-injectionにて淡く造影され,肝転移と診断した.後日にMRIを施行.膵腫瘍の嚢胞部分はT1WIで高信号,T2WIで強い高信号を認め,腫瘍内部の出血変性が疑われた.一方,充実部はT1WIで不均一な低信号,T2WIで不均一な高信号で,拡散強調像では高信号を呈した.肝においてはEOB肝細胞相で欠損,拡散強調像で高信号を呈する小結節を数個認めた.以上よりMRIも造影超音波同様に膵SPN・多発肝転移と診断した.組織診断を目的に肝S6 径11mmの転移巣を狙撃生検,膵腫瘍はEUS-FNAを施行した.いずれも病理所見は,N/C比の高い小型の好酸性の腫瘍細胞が血管のある間質を中心として偽乳頭状の増殖を示し,免疫染色ではβ-catenin,CD56,α1-antitrypsin陽性であり,膵・肝いずれもSPNの確定診断となった.
【考察】
膵SPNは, 比較的稀な腫瘍で,かつ画像所見が多彩であることからしばしば診断が困難なことがある.本症例は組織学的診断がされた膵原発巣・肝転移巣の両者を造影超音波で評価し得た貴重な症例と考え報告する.