Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
肝線維化/脂肪化 診断

(S686)

特徴選択を用いた機械学習による肝線維と肝脂肪割合の推定に関する検討

A Study with Feature Selection for Estimation of Fibrosis and Steatosis Grades of Liver by Machine Learning

野口 幸代, 神山 直久, 大栗 拓真, 黒田 英克, 阿部 珠美, 藤原 裕大, 三上 有里子, 滝川 康裕

Sachiyo NOGUCHI, Naohisa KAMIYAMA, Takuma OGURI, Hidekatsu KURODA, Tamami ABE, Yudai FUJIWARA, Yuriko MIKAMI, Yasuhiro TAKIKAWA

1GEヘルスケア・ジャパン株式会社超音波製品開発部, 2岩手医科大学内科学講座消化器内科肝臓分野

1Ultrasound General Imaging, GE Healthcare Japan, 2Division of Hepatology, Department of Internal Medicine, Iwate Medical University

キーワード :

【はじめに】
びまん性肝疾患の評価を目的として,我々は,超音波診断装置より得られる特徴量Shear Wave Elastography(SWE),Signal to Noise Ratio(SNR),およびAttenuation Coefficient(AC)を入力として機械学習を行うことにより,推定される肝線維および肝脂肪割合が,病理画像から得られる実測値と比較的良好に相関することを報告した[1].本研究では,特徴量として患者背景因子を加え,特徴選択による最適な特徴量の組み合わせに関する検討を行った.
【方法】
入力として,超音波特徴量3項目(SWE,SNR,AC)に加え,肝線維割合に対してはその他の患者背景因子8項目(年齢,性別,AST/ALT比,プロトロンビン時間(PT),アルブミン,血小板,Ⅳ型コラーゲン7S,M2BPGi),肝脂肪割合に対しては11項目(年齢,BMI,皮膚肝臓距離,ALT,GGT,インスリン抵抗性(HOMA-R),肝臓と脾臓のCT値比(L/S比),糖尿病,総コレステロール(TC),悪玉コレステロール(LDL),中性脂肪)を使用し,機械学習による肝線維および肝脂肪割合の推定を行った.推定値の精度は,病理画像から算出された実測値との誤差で評価することができる.特徴選択の手法の一つである全数探索法に基づき,全ての組み合わせを入力として,k分割交差検証(k=5)により汎化誤差を最小にする特徴量の組み合わせを得た.次に,特徴量の組み合わせによる汎化誤差の変化の推移を観察することにより,有用な特徴量に関する評価を行った.超音波診断装置はLOGIQ E9(プローブC1-6-D)を使用し,SWEおよびBモードRFデータからSNRとACを算出した.機械学習アルゴリズムは多層パーセプトロンを用い,病理画像から算出された実測値を教師データとした教師あり学習を行った.データ数は,肝線維割合に対しては91例,肝脂肪割合に対しては77例を使用した.
【結果と考察】
肝線維および肝脂肪割合ともに,超音波特徴量のみの組み合わせよりもその他の因子も加えることにより汎化誤差は小さくなり,推定精度が向上する可能性が示された.特徴量の組み合わせの増加に伴う汎化誤差の推移を観察すると,4項目以上では同様の傾向が見られたため,4項目の組み合わせについて評価した.汎化誤差を最小または最大にする各10通りの組み合わせに含まれる特徴量を観察すると,特徴量は以下の3つに分類されることが分かった.1. 良好に作用する特徴量(汎化誤差最小群に多く存在かつ最大群に少なく存在),2. 除外すると良好に作用する特徴量(汎化誤差最小群に少なく存在かつ最大群に多く存在),3. 影響の少ない特徴量(その他).肝線維割合に対しては1. SWE,SNR,Ⅳ型コラーゲン7S,M2BPGi,2. 性別,AST/ALT比,血小板,3. AC,年齢,PT,アルブミン,肝脂肪割合に対しては1. SNR,AC,L/S比,2. ALT,GGT,HOMA-R,糖尿病,3. SWE,年齢,BMI,皮膚肝臓距離,TC,LDL,中性脂肪であった.
【まとめ】
特徴選択により,肝線維および肝脂肪割合の推定において有用となる特徴量について考察した.超音波特徴量だけでなくその他の患者背景因子も加えて最適な組み合わせで使用することにより,肝線維および肝脂肪割合の推定値と実測値との汎化誤差をより小さくすることができ,びまん性肝疾患の形態把握に有用であることが示唆された.
【文献】
[1]野口他,日超医第90回学術集会, 90-消-053(2017)