Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
エラストグラフィ 2

(S683)

呼吸位による肝臓Shear Wave Elastographyの影響について

Influence of respiratory position on the shear wave liver elastography

小川 優, 久保島 瑠菜, 後藤 光, 高師 紀子, 高木 伸光, 山本 祐子, 平野 映里佳, 木村 豊, 佐藤 新平, 中村 文隆

Masaru OGAWA, Runa KUBOSHIMA, Mitsuru GOTOU, Noriko TAKASHI, Nobumitsu TAKAGI, Yuko YAMAMOTO, Erika HIRANO, Yutaka KIMURA, Shinnpei SATOU, Fumitaka NAKAMURA

1帝京大学ちば総合医療センター検査部, 2帝京大学ちば総合医療センター第三内科

1Clinical laboratory, Teikyo University Chiba Medical Center, 2Third Department of Internal Medicine, Teikyo University Chiba Medical Center

キーワード :

【目的】
近年,超音波技術の応用で肝硬度を測定し線維化診断を行う種々の方法が開発され,注目されるようになってきた.当検査室に導入された超音波診断装置もShear Wave Elastography(以下SWE)が搭載されており,肝硬度計測が可能である.SWE測定時には被検者の息止めが必要となる.今回,安静呼気位と安静吸気位の息止めでどのようにSWE測定値が変化するか検討を行った.
【対象】
2017年8月から2017年12月に当検査室で腹部超音波を施行し,SWEが計測可能であった91例.年齢は13-86歳(平均60.4歳).男性47例,女性44例.疾患については肝機能正常群38例,慢性肝炎群14例,肝機能障害群22例,脂肪肝群13例,その他4例であった.
【方法】
91例について,安静呼気位SWE(以下呼気SWE)および安静吸気位SWE(以下吸気SWE)に各3回SWEの計測を行い,それぞれの中央値の比較を行った.血液データ(アルブミン,総ビリルビン,AST,ALT,GGT,血小板数)を取得し,各種指数(Fib-4,AAR,APRI)について各上昇群および正常群について呼気SWEと吸気SWEの計測値の差について比較を行った.疾患との関連を調べるため,肝機能正常群,慢性肝炎群,肝機能障害群,脂肪肝群についても呼気SWEと吸気SWEの比較を行った.
【結果】
91例全体では呼気SWE1.45±0.32m/s,吸気SWE1.47±0.32m/s,p=0.06であり吸気時に高値傾向があるものの,有意差は認められなかった.
各種指数についてはFib-4正常群(34例)で呼気SWE1.34±0.20m/s,吸気SWE1.37±0.21m/s,p=0.73. Fib-4上昇群(54例)で呼気SWE1.53±0.40m/s,吸気SWE1.57±0.38m/s,p=0.06.AAR正常群(17例)で呼気SWE1.42±0.24m/s,吸気SWE1.48±0.26m/s,p=0.33.AAR上昇群(73例)で呼気SWE1.48±0.36m/s,吸気SWE1.50±0.36m/s,p=0.13.APRI正常群(77例)で呼気SWE1.42±0.23m/s,吸気SWE1.45±0.24m/s,p=0.17.APRI上昇群(11例)で呼気SWE1.79±0.72m/s,吸気SWE1.79±0.68m/s,p=0.23.Fib-4上昇群のみ吸気時に高値傾向があるもの,有意差は認められなかった.
各疾患群では肝機能正常群で呼気SWE1.35±0.14m/s,吸気SWE1.38±0.13m/s,p=0.41,慢性肝炎群で呼気SWE1.79±0.59m/s,吸気SWE1.80±0.55m/s,p=0.42,肝機能障害群で呼気SWE1.42±0.33m/s,吸気SWE1.45±0.34m/s,p=0.52,脂肪肝群で呼気SWE1.47±0.23m/s,吸気SWE1.51±0.26m/s,p=0.58であり,いずれの群でも有意差は認められなかった.
【考察】
今回の検討では,呼気SWEと吸気SWEでは有意差は認められなかったが,全症例での比較とFib-4上昇群では吸気SWEが呼気SWEに比べ高値になる傾向がみられた.吸気位で高値になることから,呼吸筋の緊張や腹圧上昇による肝静脈のうっ血などによる影響があることが考えられた.
【結論】
呼吸位によるSWE値の変化は軽微であるが,吸気位で高値傾向があった.計測時は呼気位に統一するか,吸気位で測定する場合は高値傾向に注意して計測を行うことが必要である.