Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
エラストグラフィ 1

(S677)

肝硬度測定におけるShear Wave ElastographyとMR Elastographyとの乖離例について

About an estrangement with Shear Wave Elastography and MR Elastography in liver hardness measurement

石川 照芳, 橋ノ口 信一, 片岡 咲, 今吉 由美, 丹羽 文彦, 竹島 賢治, 熊田 卓, 豊田 秀徳, 多田 俊史, 金森 明

Teruyoshi ISHIKAWA, Shinichi HASHINOKUCHI, Saki KATAOKA, Yumi IMAYOSHI, Fumihiko NIWA, Kenji TAKESHIMA, Takashi KUMADA, Hidenori TOYODA, Toshifumi TADA, Akira KANAMORI

1大垣市民病院医療技術部診療検査科形態診断室, 2大垣市民病院消化器内科

1Department of Clinical Research, Ogaki municipal hospital, 2Department of Gastroenterology, Ogaki municipal hospital

キーワード :

[目的]
肝生検に代わる肝線維化診断の非侵襲的評価法として超音波を用いたShear Wave Elastography(以下SWE)やMR Elastography(以下MRE)の有用性が報告されている.当院でも両装置による肝硬度測定を行っているが,しばしば測定困難例を経験する.そこで今回我々は両装置においてほぼ同時期に弾性値の測定を行いその乖離例について評価を行ったので報告する.
[対象]
当院で2016年1月から2017年9月の間に慢性肝疾患の精査目的で超音波による形態診断およびSWEが計測され,かつMRIによるProton density fat fraction(PDFF)が測定された466例中,SWEとMREの弾性値の相関を求め95%予測区間より外れた(乖離例)22例である.
乖離例の内訳は性別(男性/女性):10/12例,年齢:64(44-81)歳,HCV15例,HBV2例,nonB-nonC5例.
使用装置はUSがGE社LOGEQ S8,MRIはGE社 Discovery MR750W(3T).
弾性値の測定はSWEが右肋間より息止め下で可能な限り血管などの構造物を含めない領域に1cmのROIを設定し5回計測しその中央値を採用した.MREは右葉の測定可能領域を手動で囲み4断面計測しその平均値を採用した.
比較項目は文献的に測定結果に影響を与えると報告されている項目を鑑み,高いBMI(>28kg/m2),鉄の堆積,肝切除・腹水の有無,患者の呼吸状態,SWEの測定位置(皮下厚>20mm),SWE,MRE測定値の変動率((SD/MRE)×100%)>30%とした.
MRE不良例は呼吸停止不良やMRE計測時のクロスハッチング量が右葉に大きく入り込み測定部位が小さくなる症例とした.
[結果]
SWEとMREの弾性値の相関はr=0.719と良好な相関を認めた.
SWEが低く乖離した5例と高く乖離した17例でFisher検定を行ったがいずれの値も有意差を示さなかった.
内訳はBMI:26(19-34)kg/m2,血小板:15.9(6.3-29.6)万/μl,FIB4index:3.82(0.5-8.82),SWE計測時の肝表までの距離15.1(11.1-21.8)mm,MRでの脂肪量6.3(0.8-27.1)%,Fe量:48.8(27-95.6),SWE測定値の変動率21.5(3-71.4)%であった.
乖離例ではBMIは28.8以下,血小板が26.6以下,FIB4index3.25以上の傾向を示した.
また,肝切除例3例,息止め不良例は1例,腹水を有する症例は1例も認めなかった.
SWEが低値に乖離した例は全例C型肝炎で,高BMI(>28kg/m2)は2/5例(40%),Fe量高値は0/5例,皮下厚20mm以上は2/5例(40%),SWE,MREとも変動率>30%は0/5例であった.SWEが高値に乖離した例は高BMI 5/17例(29.4%)Fe量高値 1/17例(5.9%),皮下厚20mm以上は6/17例(35.2%),変動率>30%はSWE 6/17例(35.2%),MRE 2/17例(11.8%)であった.
[考察]
弾性値の乖離においてMREに影響があると思われる鉄量堆積(90Hz以上)症例は1例と,呼吸停止不良を含めた測定不良例2例を除くと,ほとんどがSWEの測定不良が原因と思われた.SWEで変動率が大きかった症例は7/22(38.1%)で,肥満患者(高BMI>28kg/m2)に多く,プッシュパルスおよび超音波の伝播の妨害によるものと思われた.しかし,高値に外れる要因は特定できなかった.
[結語]
SWEの測定値が高く外れる傾向にあった.