Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓/その他/症例

(S668)

自己免疫性肝炎の経過観察中に腹部超音波検査にて発見された胸囲結核の一例

a case of pericostal tuberculosis found by US the observation of AIH

佐々木 崇, 平賀 真雄, 中村 克也, 坂口 右己, 林 尚美, 大久保 友紀, 塩屋 晋吾, 川村 健人, 有馬 大樹, 重田 浩一朗

Takashi SASAKI, Masao HIRAGA, Katsuya NAKAMURA, Yuuki SAKAGUCHI, Naomi HAYASHI, Yuki OOKUBO, Shinngo SHIOYA, Kento KAWAMURA, Daiki ARIMA, Kouichirou SHIGETA

1霧島市立医師会医療センター超音波検査室, 2霧島市立医師会医療センター消化器内科

1Department of Ultrasound, Kirishima Medical Center, 2Department of Gastroenterology, Kirishima Medical Center

キーワード :

【はじめに】
胸囲結核は肺結核の罹患率の減少とともに現在は比較的出会うことの少なくなった胸壁の慢性炎症疾患である.臨床症状は波動を伴う柔らかい腫瘤として自覚される場合が多く,病巣の進展により自潰し瘻孔を形成することもある.今回我々は,自己免疫性肝炎の経過観察中に腹部超音波検査で発見された胸囲結核の一例を経験したので報告する.
【症例】
60歳代,男性 2007年より自己免疫性肝炎にて当院肝臓内科を定期的に受診,経過観察中であった.2015年7月の超音波検査にて右背側腹壁内に48×32×21mmの紡錘形をした腫瘤像を認めた.腫瘤は境界明瞭,輪郭整,内部エコーは不均一で小さな石灰化を伴っていた.腫瘤内部に明らかな血流信号は検出出来なかった.超音波検査では血腫,膿瘍形成を考えた.造影CT検査では肝右葉背側の肝外に32×20×51mmの嚢胞状腫瘤を認めた.内腔に微細な石灰化認め,腫瘤内部の吸収値や造影効果から横隔膜下膿瘍を第一に考えるとの診断であった.腫瘤部の圧痛,発赤,腫脹と言った身体的所見はなく,採血検査でもCRPは0.14と炎症所見は見られなかった.活動性の膿瘍ではないこと,カリエスなどの可能性も考えられることより後日超音波ガイド下にて膿瘍穿刺を行った.膿瘍からは黄色膿汁が排出され,結核菌CPR陽性にて,結核性胸壁膿瘍と診断した.
【考察・まとめ】
胸囲結核の発生機序として結核性胸膜炎による胸膜の癒着・肥厚によりリンパ管の新生が起こり,そこの所属リンパ節で周囲の軟部組織を巻き込みながら乾酪性病変を形成する.今回の症例では発症時期は不明だが,結核性胸膜炎の既往があり胸膜の癒着や肥厚があった可能性も考えられる.また胸囲結核の約50%に結核性胸膜炎の既往歴があるとの報告もある.今後,高齢化傾向にある結核発病者のなかで,胸囲結核患者の高齢化も予測され,背景や状態を考慮すると治療方針の選択に苦慮する場合もあると考える.胸壁腫瘤を認めた場合,胸囲結核も念頭におき迅速な診断をしていかなければならないと考え,文献的考察を加え報告した.