Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓/その他/症例

(S666)

当院に救急入院した腹部疾患症例の検討-超音波検査とCTとの対比-

Comparison between Ultrasonography and CT in Abdominal Emergency.

若杉 聡, 佐藤 晋一朗, 保坂 祥介, 伊藤 峻, 梅木 清孝, 森本 喜博, 小林 亮介, 緒方 賢司, 田中 みのり

Satoshi WAKASUGI, Shin-Ichirou SATOU, Shousuke HOSAKA, Shun ITOU, Kiyotaka UMEKI, Yoshihiro MORIMOTO, Ryousuke KOBAYASHI, Kenji OGATA, Minori TANAKA

1千葉西総合病院消化器内科, 2千葉西総合病院外科, 3千葉西総合病院臨床検査室

1Division of Gastroenterology Internal Medicine, Chiba-nishi General Hospital, 2Department of Surgery, Chiba-nishi General Hospital, 3Ultrasonography Department, Chiba-nishi General Hospital

キーワード :

【目的】
腹部救急疾患で超音波検査(以下US)とCTがどの頻度で使用されているかを明らかにするために,当院の消化器内科および消化器外科に緊急入院した腹部救急疾患における両検査の施行状況を検討した.
【対象と方法】
2015年9月1日から2016年4月13日の期間に当院消化器内科および消化器外科に緊急入院した腹部救急疾患症例400例(消化管出血を除く)である.これら症例において,USが行われた症例と,CTが行われている症例数を比較した.両検査が行われた症例では,どちらが病変部を正確に描出しているかを検討した.CTについては,造影,非造影を区別しなかった.
【結果】
2015年9月1日から2016年4月13日の期間に緊急入院した腹部救急疾患症例400例中,急性胆管炎74例であった.5例でUSのみ施行,31例でCTのみ,38例で両検査が施行されていた.両検査が行われた22例中,CTが良好に病変を描出された症例(以下CT優位)は20例,USの方が良好であった症例(以下US優位)は3例,両検査同等(以下同等)と思われた症例は15例であった.イレウスは74例で,USのみ0例,CTのみ66例,USとCT両方8例(CT優位6例,US優位1例,同等1例)であった.急性虫垂炎は65例で,USのみ7例,CTのみ34例,USとCT両方24例(CT優位6例,US優位5例,同等13例)であった.急性胆嚢炎はUSのみ2例,CTのみ16例,USとCT両方25例(CT優位5例,US優位9例,同等11例)であった.急性胃腸炎は28例で,USのみ1例,CTのみ11例,USとCT両方10例(CT優位5例,US優位2例,同等3例)であった.急性膵炎は22例で,USのみ1例,CTのみ11例,USとCT両方10例(CT優位5例,US優位2例,同等3例)であった.消化管穿孔は17例で,USのみ0例,CTのみ14例,USとCT両方3例(CT優位2例,US優位0例,同等1例)であった.大腸憩室炎は17例で,USのみ1例,CTのみ10例,USとCT両方6例(CT優位4例,US優位1例,同等1例)であった.虚血性腸炎は11例で,USのみ0例,CTのみ7例,USとCT両方4例(CT優位0例,US優位0例,同等4例)であった.肝膿瘍は6例で,USのみ0例,CTのみ1例,USとCT両方5例(CT優位0例,US優位2例,同等3例)であった.その他,最終診断が便秘症4例,肝細胞癌破裂4例,脾破裂1例,肝外傷1例,小腸壊死2例,上腸間膜症候群1例,腹腔内血腫2例,骨盤内炎症2例,急性胃炎1例,その他23例であったが,腹部CTで診断されていた.
【考察】
400例の腹部救急疾患のうち主要な357例(急性胆管炎,イレウス,急性虫垂炎,急性胆嚢炎,急性胃腸炎,急性膵炎,大腸憩室炎,消化管穿孔,虚血性腸炎,肝膿瘍)中,USが有効に行われていたと思われる症例は100例(28%)であった.一方CTが有効に行われていた症例は319例(86%)であった.腹部救急疾患において,超音波検査は有用と言われているが,残念ながら一般病院の救急外来ではUSが有効に使用されているとは言えない結果であった.胆道疾患,消化管疾患については,教科書に書かれていること,学会で報告されていることが浸透しているとは思われない結果であった.今後は,いかに研修医や技師に,救急超音波検査の有用性を教育することが重要であると考える.
【結語】
腹部救急疾患において,超音波検査が有効に使用されていないのが現状である.腹部救急疾患における超音波検査の有用性をどのように教育するかが,今後の課題である.