英文誌(2004-)
一般口演 消化器
肝腫瘍/症例
(S664)
肝内に発生したreactive lymphoid hyperplasiaの1例
A case of reactive lymphoid hyperplasia in the liver
宮内 元樹, 桜井 正児, 松永 光太郎, 有泉 泰, 信岡 祐彦, 鈴木 健吾
Motoki MIYAUCHI, Masaru SAKURAI, Kotarou MATUNAGA, Yasushi ARIIZUMI, Sachihiko NOBUOKA, Kengo SUZUKI
1聖マリアンナ医科大学病院超音波センター, 2聖マリアンナ医科大学消化器肝臓内科, 3聖マリアンナ医科大学臨床検査医学講座, 4聖マリアンナ医科大学病理学
1Ultrasound examination center, St. Marianna University School of Medicine Hospital, 2Gastroenterology & Hepatology, St. Marianna University School of Medicine, 3Laboratory Medicine, St. Marianna University School of Medicine, 4Pathology, St. Marianna University School of Medicine
キーワード :
【症例】
58歳,女性.胃癌術後の経過観察目的で施行した腹部超音波検査にて,肝右葉に約11×9×8mm大の境界明瞭な低エコー腫瘤を指摘された.
超音波所見上は肝転移を疑い精査を施行.血清腫瘍マーカーはCEA0.9ng/ml,AFP6.5ng/ml,PIVKA-Ⅱ22mAU/mLと上昇は認めなかった.腹部造影CTでは,動脈相にて斑状造影効果を認めるものの,門脈相では肝実質と等濃度を示し腫瘤としては確認できず,同部の血流障害が疑われた.Gd-EOB-DTPA造影MRIでは,T2強調画像で淡い高信号を呈しており拡散強調画像では高信号であった.造影早期相で造影効果を認め遅延相にてwashoutされ,肝細胞相では取り込み不良であり肝細胞癌を否定できない所見であった.PET-CTでは異常集積が認められず転移性肝癌は否定的であるものの肝細胞癌を否定することはできないとの結果であり,短期間で経過観察の方針となった.
一年後の腹部造影CT検査において腫瘤の増大傾向を認め,精査目的に腹部造影超音波検査が施行された.Early vascular phaseで明らかな染影を認め,注入開始から40秒でほぼcomplete defectとなり,肝細胞癌として矛盾しない所見であった.翌日行われた肝腫瘍生検では肝細胞癌を含め上皮性腫瘍の所見が得られず,悪性リンパ腫の可能性が否定できない結果であったが,肝細胞癌を否定できず,肝後区域切除術を施行した.
病理組織診断では結節内に複数の杯中心を有するmonotonousな小型リンパ球の集簇が認められた.悪性リンパ腫の可能性が疑われたが,免疫染色で増殖した小型リンパ球細胞を腫瘍性と判断する所見が認められず,reactive lymphoid hyperplasia(RLH)と診断された.
【考察】
RLHはpseudolymphomaあるいはnodular lymphoid lesionともよばれ,肺,消化管,膵臓,眼窩,皮膚,甲状腺などに発生することが知られているが,肝臓での発生例は少ないとされる.悪性腫瘍が否定出来ず切除に至った例も存在し,宮崎等によると術前診断の内訳としては,45例中,肝細胞癌23例,肝内胆管癌2例,転移性肝癌16例,悪性リンパ腫1例であった.
今回我々が経験した肝RLHの超音波像は,B-modeでは境界明瞭,内部均一な低エコー腫瘤で,造影所見ではEarly vascular phaseで明らかな染影を認め,造影から約40秒でほぼcomplete defectを呈し,肝細胞癌に類似の像であった.背景にびまん性肝疾患がなく,肝細胞癌を疑う所見を呈する腫瘤を肝内に認めた場合,肝RLHも鑑別に挙げた方がよいと考えられた.
【結語】
肝内に発生したRLHの症例を経験したので報告する.