Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
脂肪性肝障害

(S662)

脂肪肝におけるCT所見とUS所見の乖離症例の検討

Study of divergence cases of CT findings and ultrasound findings in fatty liver

市川 宏紀, 丹羽 文彦, 橋ノ口 信一, 石川 照芳, 片岡 咲, 竹島 賢治, 熊田 卓, 豊田 秀徳, 多田 俊史, 金森 明

Hironori ICHIKAWA, Fumihiko NIWA, Shinichi HASHINOKUCHI, Teruyoshi ISHIKAWA, Saki KATAOKA, Kenji TAKESHIMA, Takashi KUMADA, Hidenori TOYODA, Toshifumi TADA, Akira KANAMORI

1大垣市民病院医療技術部診療検査科, 2大垣市民病院消化器内科

1Department of Clinical Research, Ogaki municipal hospital, 2Department of Gastroenterology, Ogaki municipal hospital

キーワード :

【背景・目的】
超音波検査(US)は組織学診断と比較して,中等度の重症度である脂肪肝の検出について信頼でき正確であり,低コスト,安全性,使いやすさから,脂肪肝に対するスクリーニング検査として用いられる.CTはUSに次いで簡便に行える画像検査であり,一般的に肝脾CT値比が1.1以下で30%以上の脂肪肝との報告がある.しかし,脂肪肝評価においてUSとCT所見の乖離症例をまれに経験する.今回,脂肪肝におけるUSとCT所見の乖離症例において検討したので報告する.
【方法】
2015年1月~2017年12月に施行された腹部USと腹部単純CTが同時期(1か月以内)に施行されている63854例中,読影レポートに「脂肪肝」「fatty liver」と記載のある4865例を対象とした.USの脂肪肝所見はSTCを中央の位置で固定,フォーカスは肝下縁に設定し一定の条件下で取得し,Hamaguchiらの既報に従いスコアリング(スコア0~6)で分類した.CTの脂肪肝所見は肝内血管の埋没または濃度反転を脂肪肝とした.乖離症例としてUS脂肪肝スコア3以上でCTの脂肪肝所見がない症例をCT非脂肪肝例,CTで脂肪肝所見があるがUSで脂肪肝所見がない(脂肪肝スコア0)または軽度(脂肪肝スコア1・2)の症例をCT脂肪肝例とした.それぞれの乖離症例においてその頻度と患者背景などの点から原因を検討した.
【結果】
乖離症例の頻度は CT脂肪肝例9例(0.18%),CT非脂肪肝例22例(0.45%)であった.
CT脂肪肝例は,3例はアルコール性肝障害,2例はCT施行時に糖尿病性ケトアシドーシス(DKA),その他4例はCTで肝血管影が埋没しているが採血データはいずれも正常であった.脂肪肝スコアの内訳は2が2例(0.04%),0が7例(0.14%)であった.
CT非脂肪肝例は,1例が高度の肝硬変,21例はCTでは脂肪肝所見がなく採血データはいずれも正常であった.
【考察】
CT脂肪肝例において,アルコール性肝障害とDKAが要因と推測される.アルコール性肝障害の症例に関して,US所見が軽度なのに対してCT所見は高度であった.肝臓の大きさや装置による減衰補正などが原因であった可能性が考えられる.また,アルコール性肝障害と非アルコール性肝障害では組織像での違いが報告されており,核空胞化など何らかが因子となり音響インピーダンスの差が小さくなった可能性もある.
DKAの症例に関しては,US上の脂肪肝スコアも0であるのに対し,CT所見は高度であった.一過性に肝酵素が上昇し脂肪肝も多く併発するという報告がされている.2例とも前後の対象期間外のCTでは脂肪肝所見がみられず,脂肪肝改善後にUSを施行した可能性があり乖離症例として不適当である可能性がある.肝血管影が埋没しているが採血データは正常であった4症例はカルテ上特記すべき情報もなく検討不能であった.CT非脂肪肝例において,肝硬変症例はFIB4-indexが4.6であった.肝硬変症例では線維化が進行した例ではCT上,明らかな脂肪肝所見が消失する場合があるため,所見の乖離を生じた可能性がある.また,その他の症例は多くが肥満体型(皮下脂肪の厚みの平均が36.5mm)であり,腹腔内脂肪や皮下脂肪による減衰で脈管の不明瞭などの所見が過大評価されたと推測される.
【結論】
USによる脂肪肝評価は,患者背景や体型などが評価に影響する可能性が示唆された.