Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
肝腫瘍

(S659)

静脈短絡を伴った肝血管腫例の検討

Hepatic hemangioma with venous shunt

石田 秀明, 山中 有美子, 八木澤 仁, 長沼 裕子, 大山 葉子, 小川 眞広, 鈴木 克典, 宮内 孝治

Hideaki ISHIDA, Yumiko YAMANAKA, Hitoshi YAGISAWA, Hiroko NAGANUMA, Yoko OHYAMA, Masahiro OGAWA, Katsunori SUZUKI, Takaharu MIYAUCHI

1秋田赤十字病院消化器科, 2市立横手病院消化器科, 3秋田厚生医療センター臨床検査科, 4日本大学病院消化器肝臓内科, 5山形県立中央病院消化器科, 6秋田赤十字病院放射線科

1Department of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Akita Kousei Medical Center, 4Department of Gastroenterology and Hepatology, Nihon University Hospital, 5Department of Gasroenterology, Yamagata Prefectural Central Hospital, 6Department of Radiololgy, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

最近,肝腫瘍の還流血管に関する報告が増加しつつある.しかし,その多くが,原発性肝細胞癌と限局性結節性過形成に関するもので,血管腫に関するものは僅かである.今回我々はこの点に関し下記の要領で検討し若干の知見を得たので報告する.
【対象と方法】
造影超音波検査で,1)病変辺縁にcotton-wool様の造影剤の“たまり”がみられ,2)経時的に造影剤のfill-in現象が確認され,3)後血管相で“造影剤の抜け”を示さず,血管腫の最終診断がなされ,周辺の複数の肝静脈内への造影剤の流出が一様でなかった肝血管腫5例(年齢:41-81歳(平均:59歳,全員女性))で,その超音波所見を再検討した.
【結果】
1)病変は全て単発,S3,S4,S6,各1例,S5,2例,血管腫径(3-7cm,平均:3.8cm),2)病変は全て動脈-門脈短絡も伴っていた,3)1例では,血管腫が濃染された直後に多数の肝静脈が造影された,が他の4例では血管腫が濃染された7-18秒(平均:11秒)後に1本の肝静脈内部に造影剤がしみ出すように移動していった.
【まとめと考察】
以前は悪性腫瘍の所見と言われていた腫瘍辺縁域の短絡形成も,最近では,良性病変でも頻繁にみられ,必ずしも病変の性状診断の一助にはならないと考えられるようになった.それに伴い,肝血管腫に伴う動脈-門脈短絡の超音波所見,とりわけカラードプラ所見の報告が増加し,今では,カラードプラ上,a)血管腫の辺縁-周辺域に,b)二本の血管が併走し,c)その内部の血流方向がFFT波形上逆方向,という所見をとらえることで,肝血管腫に伴う動脈-門脈短絡の診断は容易になされるようになった.しかし,それに比し,腫瘍と肝静脈との関わりに関しては未だ解明が遅れている.その遅れの要因として,血管腫近傍を走行する肝静脈は下大静脈に向かう血流が主体で僅かな異常の有無は,血流の僅かな変化を色調でとらえられやすい門脈の場合と異なり,カラードプラ検査ではとらえれない事が挙げられる.もう一つの要因として,これも門脈の場合と異なり,血管腫と周辺の肝静脈全体をカラードプラで観察可能な断面設定が技術的に容易ではないことが挙げられる.造影超音波法は造影剤の時間的推移を表示可能であり,この時間推移情報の加味は最初の要因をある程度解決できる,という考えが今回の検討の出発点であった.一般的には,肝血管腫の還流血管は肝静脈とされている.事実,肝血管腫の造影超音波検査で,血管腫が染まったのちに周辺肝静脈内に造影剤がゆっくりと一様に流出していく現象がこれを示している,と思われる.しかし,今回みられた5例では,この造影剤の流出が不均一で通常とは異なっていた.これらの症例では,a)血管腫のfill-in速度が早い,いわゆるhigh-flow血管腫で,b)(カラードプラで)動脈-門脈短絡形成例がみられた.なお,肝静脈への造影剤の流出に関しては,c)血管腫周囲の一本の肝静脈に,d)血管腫が染まってから約10-20秒後に,他の肝静脈の染まりよりかなり早く,造影剤がしみ出す,というものが多数であった.肝血管腫の還流を考える上で示唆に富む症例を造影超音波所見を中心に報告した.