Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
肝腫瘍

(S658)

肝血管腫の造影超音波検査のfill in patternの検討

Examination of fill in pattern which appears in the contrast enhanced ultrasonography in hepatic hemangioma

韮澤 澄恵, 新井 行平, 中田 直美, 杉本 朝子, 渡邉 憲子, 中河原 浩史, 山本 敏樹, 長沼 裕子, 石田 秀明, 小川 眞広

Sumie NIRASAWA, Kouhei ARAI, Naomi NAKATA, Asako SUGIMOTO, Noriko WATANABE, Hiroshi NAKAGAWARA, Yoshiki YAMAMOTO, Hiroko NAGANUMA, Hideaki ISHIDA, Masahiro OGAWA

1日本大学病院臨床検査部, 2日本大学病院消化器内科, 3秋田赤十字病院消化器内科, 4市立横手病院消化器内科

1Clinical inspection unit, Nihon University Hospital, 2gastroenterology, Nihon University Hospital, 3gastroenterology, Japanese Red Cross Akita Hospital, 4gastroenterology, Yokote Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
肝血管腫は肝良性腫瘍の中で最も頻度が高く臨床の場でもたびたび遭遇する腫瘍である.当学会の肝腫瘤の診断基準においてもB-modeの特徴的な所見(marginal strong echo)や付加所見である内部エコーの変化を認めた場合には診断が可能となる.しかし全例でこれらの所見が認められるわけではなく精査目的で造影超音波検査が施行されることがある.造影超音波検査においては周囲から斑状の濃染パターンは当学会の診断基準にも記載され診断根拠となっている.この所見はfill in patternと呼ばれているが,この所見がどの位の腫瘍径から観察可能であるか?どの程度認めるのか?など疑問に残る点は多い.そこで今回我々は過去の臨床的に肝血管腫と診断が下された肝腫瘍の造影超音波検査を顧みてその特徴を検討したので報告をする
【対象】
対象は,2016年から2017年に当院で超音波検査を施行し,MRIまたは造影CT検査がほぼ同時期に施行され臨床的に肝血管腫と診断が下された症例とした.
【方法】
使用装置:GEヘルスケア社製LOGIQE9,S8,キャノンメディカルシステムズ社製APLIO500,日立製作所社Ascendus.造影超音波検査は,全例Sonazoid 0.5ml/bodyの急速静注で施行.過去の超音波画像を画像サーバーから再出力し再評価を行い,腫瘤最大径,腫瘤内部のエコーレベル,エコーパターンと造影効果について比較検討した.
【結果】
超音波検査で指摘される腫瘍に何しては10mm前後の腫瘍であってもほとんどの症例でfill in patternを認め的確に診断が可能であった.小さな腫瘍や早期に腫瘍全体が濃染する腫瘍では空間時間分解能の最も高い手法での造影が適切であると考えられlow MIのphase inversionのTissue harmonic imagingを用いて撮影することが好ましく,適時加算画像を用いて評価することで客観的な評価が可能であると考えられた.また内部エコーが低エコーを呈するものにAPshunt等を含む早期濃染の腫瘍が多い傾向が認められた.
【考察】
肝血管腫のほとんどが海綿状血管腫である.海綿状肝血管腫の特徴として腫瘤内の血流貯留が特徴であり,造影超音波検査において他の多血性の腫瘤とは異なる特徴的な造影パターンを呈し診断根拠となっている.造影早期に周囲に斑状に始まった濃染は徐々に内部に染み込むような広がり方を示すこの濃染パターンを,fill in patternと称し特徴的なサインとなっている.腫瘤の大きさや内部の組織学的な性状によって染まる速度に違いがあるが,肝血管腫の画像診断として重要なサインとして観察のポイントとなっている.非典型例としてA-P shuntを伴うもの,全体に早期濃染を示すもの,後期に一部が点状に濃染を示すもの,後期相まで濃染を示さないもの,なども存在したが時間・空間分解能の高い超音波検査では高率にその所見の拾い上げが可能となるため有用な検査法であることが確認された.
【結論】
造影超音波検査は,10mm前後の小腫瘤性病変においても確実に造影超音波検査でfill in patternを呈し,肝血管腫の精密検査として極めて有効な手法であると考えられた.