Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
肝腫瘍

(S658)

後血管相で欠損像を示す肝血管腫の検討

Contrast-enhanced ultrasonography with Sonazoid for hepatic hemangioma: examination of enhancement patterns in post-vascular phase

清水 遼, 井田 良幸, 前島 秀哉, 新垣 直樹, 前北 隆雄, 井口 幹崇, 玉井 秀幸, 加藤 順, 北野 雅之

Ryo SHIMIZU, Yoshiyuki IDA, Shuya MAESHIMA, Naoki SHINGAKI, Takao MAEKITA, Mikitaka IGUCHI, Hideyuki TAMAI, Jun KATO, Masayuki KITANO

1和歌山県立医科大学第二内科, 2和歌山ろうさい病院肝臓内科

1Second Department of Internal Medicine, Wakayama medical university, 2Department of Hepatology, Wakayama Rosai Hospital

キーワード :

【目的】
肝血管腫は造影超音波検査の後血管相で,一般的に「肝実質と同等,一部造影されない場合有り」とされているが, 造影されない肝血管腫の具体的な頻度は明らかでない.本研究では後血管相を含む肝血管腫の造影超音波像を明らかにする.
【対象と方法】
2010年5月から2017年12月の間に,当院において造影CTまたは造影MRIにより肝血管腫と診断された症例のうち造影超音波検査を施行された69例72結節を対象とした.腫瘍径の中央値は19.5mm(6.0-85.0mm),病変部位(S1/2/3/4/5/6/7/8)はそれぞれ0/4/9/5/14/17/14/9結節であった.造影超音波検査はソナゾイド0.7mlを静脈投与して行われた.使用装置はAplio XG,ACUSON S2000,ARIETTA850.造影剤投与直後から1分までは連続した観察により腫瘍血流を評価し,腫瘍血流の評価では腫瘍全体が一瞬で濃染する群と辺縁から中央に向かって濃染する群に分類した.また,造影剤投与3分後,5分後,7分後,10分後で腫瘍における欠損の有無を周囲肝実質と比較し評価し,肉眼的に周囲肝実質よりも造影効果が低下しているものを欠損と定義し,各時点において欠損している腫瘍の割合を算出した.さらに造影剤投与10分後の後血管相において欠損群と非欠損群で,腫瘍径,腫瘍部位,使用機種,Bモード像,血管相での濃染パターンを比較し,肝血管腫の後血管相での欠損に影響を与える因子を検討した.
【結果と考察】
腫瘍内部のBモードは,高エコー型24結節,辺縁高エコー型10結節,混在型14結節,低エコー型24結節であった.Bモードでの腫瘍の境界は,明瞭が42結節,不明瞭が30結節であった.造影剤投与直後から1分までの腫瘍血流の評価では,腫瘍全体が一瞬で濃染したものが7結節(9.7%),辺縁から中央に向かって濃染したものが65結節(90.3%)であった.造影剤投与3分後に欠損していたものは6結節(8.3%),5分後に欠損していたものは12結節(16.7%),7分後に欠損していたものは29結節(40.3%),後血管相で欠損していたものは44結節(61.1%)であった.腫瘍全体が一瞬で濃染された7結節中4結節(5.6%)が後血管相で欠損像を呈していた.Kupffer細胞が存在しないにも関わらず肝血管腫が後血管相で濃染している理由として,腫瘍内部の血流が遅く後血管相では血流が停滞しているため造影剤の流出が遅れているとの報告がある.しかし自験例では約61%の病変において後血管相での欠損像がみられており,腫瘍血流は実はそれ程遅くないのかもしれない.動脈優位相での早期濃染についての報告ではあるが,A-P shuntによるものや腫瘍内部の血洞腔の狭小化による流速の上昇が考えられている.後血管相で欠損像を呈する腫瘍についても血行動態を変化させる,つまり血管相よりも後血管相での血流速度を上昇させる何かしらの機序が存在している可能性が考えられる.
【結論】
今回の検討では後血管相で欠損がみられる病変が44結節(61.1%)あった.その多くは動脈優位相での濃染パターンを注意深く観察することで肝細胞癌との鑑別が可能であった.しかし肝細胞癌と同様に動脈相で濃染し後期相で欠損する病変も4結節(5.6%)存在したため,これらの病変については注意が必要である.