橋本 眞里子, 西村 貴士, 西村 純子, 吉田 昌弘, 東浦 晶子, 柴田 陽子, 中野 智景, 藤元 治朗, 廣田 誠一, 飯島 尋子

Mariko HASHIMOTO, Takashi NISHIMURA, Junko NISHIMURA, Masahiro YOSHIDA, Akiko HIGASHIURA, Yoko SHIBATA, Chikage NAKANO, Jiro FUJIMOTO, Seiichi HIROTA, Hiroko IIJIMA

¹兵庫医科大学超音波センター, ²兵庫医科大学肝・胆・膵内科, ³兵庫医科大学肝・胆・膵外科, ⁴兵庫医科大学病院病理部

¹Depertment of Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine,Hyogo,Japan, ²Depertment of Internal Medicine,Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Hyogo College of Medicine,Hyogo,Japan, ³Department of Surgery, Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Hyogo Colledge of Medicine, ⁴Department of Surgical Pathology, Hyogo Colledge of Medicine

キーワード :

【目的】
限局性結節性過形成（FNH）は正常肝に発生する多血性良性腫瘍で，画像検査の進歩とともに日常検査で発見される頻度が増加している．診断後は保存的治療または経過観察が第一選択であるため，その診断は重要である．以前，Bモード所見，カラー/パワードプラ所見，CEUS所見について，それぞれ内部エコーや血流シグナル，染影パターンなどに加え，腫瘍の中心部に太い血管が流入し，周囲に広がる特徴的な血管構築（spoke-wheel like pattern），中心瘢痕などの出現頻度について報告した．今回，キヤノンメディカルシステムズ（以下Canon）の超音波診断装置に搭載されている低流速血流イメージング技術“Superb Micro vascular Imaging”（SMI）を含めたカラードプラ法によるspoke-wheel like patternや肝静脈への流出血管の描出についてまとめ，ソナゾイド造影超音波検査（CEUS）との比較および有用性について検討した．
【対象と方法】
2010年3月から2017年8月までに，組織検査あるいは画像診断と臨床経過よりFNHと診断した14症例（女性12例，男性1例，平均年齢40歳）17結節を対象とした．平均腫瘍径は29mm（10-62mm）.超音波診断装置はAplioTM500（キヤノンメディカルシステムズ）を用い，カラー/パワードプラ/SMIにて，血管構築, spoke-wheel like pattern，および肝静脈への流出像の検出能を検討した．Sonazoid造影超音波検査は既報に従い，Sonazoid静注後，動脈優位相（45秒以内），門脈優位相（45秒～3分），Kupffer相（15分以降）の各時相で検討した. また一部ではSonazoidを再投与後に造影SMIで観察した．
【結果】
カラー/パワードプラ/SMIによる血管構築では17/17例全例でspoke-wheel like patternを認め，肝静脈への流出像は13/17例で明瞭に描出された．さらに造影SMIではより明瞭な画像が得られた．CEUS動門脈相においての17/17例全例でspoke-wheel like patternを認め，肝静脈への流出像の描出は7/17例であった．
【考察】
多血性肝腫瘤性病変のうち，FNHを鑑別診断するにはCEUSの染影パターンの指摘に加え，spoke-wheel like patternの評価，肝静脈への還流像の描出が重要である．CEUSでは腫瘍全体の血管構築を適切に描出できずその特徴を十分に捉えることができない場合があった．肝静脈への流出像の描出においては，CEUS動門脈相において7例であったがSMIでは13例であった．これは周囲血管との連続性や腫瘍への流入・流出血管を繰り返し描出することが可能であるため詳細な観察が可能になったためであると考えられる．
【結語】
リアルタイム，低侵襲で繰り返し詳細な血管構築を評価できるSMIは，FNH の診断に有用である．