Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 循環器
症例 心筋症

(S648)

心エコー図検査が有用であった心臓限局性サルコイドーシスの一例

A case of isolated cardiac sarcoidosis which was diagnosed by echocardiography

村山 博紀, 高岸 智, 新村 真弓, 大嶋 慎也, 中西 司, 余語 保則, 三宅 裕史, 小林 光一, 石木 良治, 岩瀬 三紀

Hiroki MURAYAMA, Tomo TAKAGISHI, Mayumi SHIMMURA, Shinnya OOSHIMA, Tsukasa NAKANISHI, Yasunori YOGO, Yuuji MIYAKE, Kouichi KOBAYASHI, Ryouji ISHIKI, Mitsunori IWASE

1トヨタ記念病院臨床検査科, 2トヨタ記念病院循環器科

1Department of Clinical Laboratory, Toyota Memorial Hospital, 2Department of Cardiology, Toyota Memorial Hospital

キーワード :

【背景】
近年,心臓以外の臓器には病変が存在しない心臓限局性サルコイドーシスの存在が注目されている.サルコイドーシスが強く疑われるも他臓器にサルコイドーシスを示唆する所見がなく診断に苦慮することが多く,ステロイド治療の開始が遅延し,病態の悪化を招くことがある.今回,われわれは健診異常の精査目的にて施行した心エコー図検査が診断の決め手となった心臓限局性サルコイドーシスの一例を経験したため報告する.
【症例】
46歳 男性.健診心電図にてB型WPW症候群を認め,当院に紹介受診となった.過去に明らかな失神歴は認めなかった.受診時の心エコー図検査では左室拡張末期径 67.7mm,左室収縮末期径 57.2mm,EF 43%であり左室内径は著明に拡大し,左室収縮能はびまん性に低下していた.心室中隔基部に限局した菲薄化(4mm)と心尖部,下壁基部に局所壁運動異常を認め,心臓サルコイドーシスが強く疑われた.有意な弁逆流所見は認めず,E/e’ 8.1,E/A 0.75,LAVI 25.9ml/m2,TMFは弛緩障害パターンであり明らかな拡張障害や左房拡大は認めなかった.その後施行された,単純CT検査では両側肺門リンパ節の腫大は認めず,67Ga citrateシンチグラフィにおいても心臓に異常集積を認めなかった.血清アンギオテンシン変換酵素(ACE)活性や血中尿中カルシウムは正常範囲内で,典型的な眼や皮膚病変等の他臓器病変も認めなかった.心内膜心筋生検においても肉芽腫等のサルコイドーシスに特徴的な所見は認めなかったが,心臓病変の主徴候5項目中2項目が陽性となり,心エコー図所見よりサルコイドーシスが強く疑われ,ステロイド療法が開始された.しかしながら,半年経過後も心機能の改善は認めず,EPSを施行したところhigh risk kent束の存在が確認され,房室結節を介する伝導は認めず,房室結節機能の著しい低下が示唆された.その後,心房細動を合併した場合pseudo VTから突然死を惹起するリスクを考慮し,CRT-D植え込みとした.現在,外来にて注意深くフォロー中であり心不全入院は認めていない.
【考察】
サルコイドーシスは全身性の肉芽腫性疾患であり,現在の診断基準では,非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を確認すること,もしくは特徴的な全身検査所見のうち5項目中2項目以上が陽性となり,呼吸器,眼,心臓の3臓器中2臓器以上において臨床所見の存在が診断に必須である.本症例のように他臓器病変の所見を欠く場合は,現行の診断基準による診断は困難であり,疑診として経過を観察するかステロイドによる治療的診断が選択される.本邦のサルコイドーシスによる死亡の約半数は心病変が原因であり,心病変をいかに早期発見し治療できるかが予後に大きく影響するため,心臓限局性病変であっても積極的な治療介入が必要と思われる.本症例は心エコー図検査が診断の決め手となったが,無症状のWPW等の軽微な心電図異常であっても積極的に心エコー図検査を行うことで本疾患の診断能向上につながると思われる.稀な疾患であり,若干の文献的考察を加えて報告する.