Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 循環器
症例 心筋症

(S646)

非対称性中隔肥大, 左室流出路狭窄を呈したFabry病の一例

A case of Fabry disease with cardiac hypertrophy: a mimic for obstructive hypertrophic cardiomyopathy

飯尾 千春子, 民田 浩一, 藤井 礼子, 川崎 俊博, 山室 淳

Chiharuko IIO, Koichi TAMITA, Reiko FUJII, Toshihiro KAWASAKI, Atsushi YAMAMURO

1西宮渡辺心臓・血管センター循環器内科, 2西宮渡辺心臓・血管センター臨床検査部

1Division of Cardiovascular Medicine, Nishinomiya Watanabe Cardiovascular Center, 2Division of Laboratory Medicine, Nishinomiya Watanabe Cardiovascular Center

キーワード :

【はじめに】
Fabry病(FD)はα-galactosidase A(α-Gal A)の遺伝的欠損や活性の低下によりGL-3が蓄積され,全身性の臓器障害を来たす遺伝性代謝異常症である.特に心機能障害は心不全や心室不整脈を引き起こし,その生命予後を規定する.近年,FDの疾患特異的な治療として酵素補充療法の有用性が報告されており,早期診断の重要性が高まっている.一方でFabry病(FD)と肥大型心筋症(HCM)は共に左室肥大を特徴とする心筋症であり,HCMと診断されている患者のうち,1%の頻度でFDの患者が存在するという報告があるが,心電図や心エコー図検査などの非侵襲的検査のみではその鑑別は容易ではないことが多い.
今回,我々はHCMとして加療されていたが遺伝子検査によってFDと確定診断し,酵素補充療法を開始した一例について,心エコー図検査での特徴について文献的考察を加えて報告する.
【症例報告】
80歳,男性.健診の心電図で異常を指摘されたことがあったが,精査および通院歴はなかった.2014年5月に血圧高値のため近医を受診したところ,閉塞性肥大型心筋症の疑いを指摘され,精査加療目的に当院を紹介受診した.心電図では左室高電位差,完全右脚ブロックを認め,心エコー図検査では非対称性中隔肥大,左室流出路狭窄を認めた.閉塞性肥大型心筋症(HOCM)としてβ遮断薬の内服を開始した.心不全症状なく経過していたが,2015年4月にFDのスクリーニング目的に血液検査を施行したところα-Gal A活性の低下と,Lyso-Gb3濃度の上昇を認め,FDが疑われた.遺伝子検査にてα-Gal A遺伝子の点突然変異を認め,Fabry病(亜型)と確定診断し,2016年1月より酵素補充療法を開始した.現在までに中隔基部壁肥厚の進行や,左室駆出率の低下なく,心不全症状の出現は認めず経過している.
【考察】
Fabry病は左室肥大を呈する場合の重要な鑑別疾患であるにも関わらず,本症例のように心電図や心エコー図検査による形態学的所見からHOCMとしてcompatibleであるため正確な診断に至っていない症例は多いと考えられる.臨床経過から心肥大の原因がHCMとして矛盾しない場合でも積極的にFDを疑いα-gal A活性の測定などスクリーニング検査を考慮することが重要と考えられた.