若見 和明, 菊池 祥平, 大手 信之

Kazuaki WAKAMI, Shohei KIKUCHI, Nobuyuki OHTE

名古屋市立大学大学院医学研究科心臓・腎高血圧内科学

Department of Cardio-Renal Medicine and Hypertension, Nagoya City University Graduate School of Medical Sciences

キーワード :

背景：Vector Flow Mapping^TM（VFM）法により左室内の相対的な圧分布のみならず，任意の2点間の圧勾配を算出することが可能となった．
目的：心房収縮期おける左室内圧勾配の値をVFMで計測し，左室拡張末期圧の推定に有用かどうかついて検討すること．
方法：対象症例は虚血性心疾患を疑い，心臓カテーテル検査および心エコー図検査を同日に施行しえた洞調律の33症例（平均年齢70歳，女性20％）．Prosound α10^TMを用いて心尖部カラードプラ3腔像を記録し，VFM法を用いて心房収縮期の左室内圧分布を算出した後，図のように僧帽弁輪部-左室心尖部間の圧勾配Aとサンプリングライン上の最大圧勾配Bを算出した．心臓カテーテル検査で記録した左室内圧曲線から，心房収縮直前の圧（pre A圧）と拡張末期圧を求めた．
結果：圧勾配Aは0.18±0.06 mmHg/cm，圧勾配Bは0.46±0.18 mmHg/cmであった．左室拡張末期圧と圧勾配AおよびBとの間にそれぞれ有意な負の相関関係を認めた（順にr＝-0.73，p＜0.001およびr＝-0.59，p＜0.001）．またpre A圧と圧勾配AおよびBとの間にもそれぞれ有意な負の相関関係を認めた（順にr＝-0.58，p＜0.001およびr＝-0.56，p＜0.001）．ROC（receiver operator characteristic）曲線を用いた解析で，圧勾配A＜0.19 mmHg/cmをcut-off値とすると，左室拡張末期圧上昇（≥16 mm Hg）を感度0.87，特異度0.90で検出可能であった．
結論： VFM法を応用して左室拡張末期圧を評価することが可能である．