齋藤 佑記, 加藤 真帆人, 永嶋 孝一, 門野 越, 相澤 芳裕, 奥村 恭男, 松本 直樹, 森山 光彦, 平山 篤志

Yuki SAITO, Mahoto KATO, Koichi NAGASHIMA, Koyuru MONNO, Yoshihiro AIZAWA, Yasuo OKUMURA, Naoki MATSUMOTO, Mitsuhiko MORIYAMA, Atsushi HIRAYAMA

¹日本大学医学部内科学系循環器内科学分野, ²日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野

¹Division of Cardiology, Department of Medicine, Nihon University School of Medicine, ²Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Medicine, Nihon University School of Medicine

キーワード :

【背景】
心不全では右房圧上昇に伴い肝うっ血をきたすことが知られている．近年，Transient Elastographyにより評価した肝硬度（Liver stiffness：LS）が右房圧と相関し，肝うっ血の評価に有用であることが報告された．しかし，急性非代償性心不全患者において，LSと臨床的特徴や予後との関係性については未だ不明な部分が多い．
【方法】
2016年10月～2017年6月に当院に入院した急性非代償性心不全患者を対象とし，入院時にLSの測定を行った．105例を解析対象とした．LSの中央値（8.8kpa）で症例を2群（high LS群（n=53）：LS≧8.8kpa，low LS群（n=52）：LS＜8.8kpa）に分け，患者背景と予後について検討を行った．心イベントを死亡と心不全再入院と定義した．
【結果】
high LS群では，総ビリルビン，γ-GTP，MELD-XIスコアが有意に高値で，総コレステロール，血小板数は有意に低値であった．心エコー図指標では，最大下大静脈径，右室径が大きく，三尖弁逆流の程度が重度であった．また，カテコラミン投与率と利尿薬の投与量は有意に高かった（all p＜0.05）．経過中（中央値153日），high LS群では有意に心イベントの頻度が高かった（long-rank p=0.001）．単変量解析にて，log LS，high LS（LS≧8.8kpa）は共に心イベントに有意にかかわる因子であり，臓器うっ血に関する他の因子（Log NT pro-BNP，総ビリルビン，γ-GTP，推定右房圧）で補正後も，LS≧8.8kpaは心イベントに関連があった　（all p＜0.05）．
【結論】
急性非代償性心不全患者において，入院時のLSは，右房圧の上昇，肝うっ血，肝障害の程度を反映し，予後予測に有用と考えられた．