増田 佳純, 浅沼 俊彦, 足立 瞳, 小妻 愛, 南 星奈, 竹田 瀬里奈, 中山 智仁, 中谷 敏

Kasumi MASUDA, Toshihiko ASANUMA, Hitomi ADACHI, Ai KOZUMA, Seina MINAMI, Serina TAKEDA, Tomohito NAKAYAMA, Satoshi NAKATANI

大阪大学大学院医学系研究科機能診断科学講座

Division of Functional Diagnostics Department of Health Sciences, Osaka University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
虚血により障害された心筋は線維化などの影響で硬くなる．Systolic lengthening（SL）とpost-systolic shortening（PSS）は虚血時にみられる微細心筋運動であり，これらの微細運動は硬い心筋では生じにくいことが予想されるが，実際の生体で検討されていない．
【目的】
動物モデルを用い，心筋虚血時において，局所心筋の硬さを変化させた場合，スペックルトラッキング心エコー法の指標である，SLやPSSが影響を受けるか検討する．
【方法】
麻酔開胸犬22頭を用い，左冠動脈回旋枝を閉塞し，100％，60％のエタノール，または生理食塩水を心筋虚血部位に直接注入することで心筋の硬さを変化させた．GE Vivid E9を用い，閉塞前，閉塞時，エタノール注入時に左室短軸像を取得した．円周方向ストレイン波形から，SLおよびPSSの最大振幅の絶対値（ε_SL，ε_PSS）を算出した．心臓摘出後，虚血心筋において，フォースゲージにより硬さの指標であるヤング率を計測した．
【結果】
ヤング率は，エタノール濃度に応じて有意に高値を示した（生理食塩水注入vs. 60％注入vs. 100％注入; 0.06±0.01 vs. 0.13±0.03 vs. 0.21±0.04 N/cm², p＜0.05）．虚血領域において，SLとPSSは生理食塩水注入群で顕著に出現したものの，60％注入群と100％注入群ではその大きさは減衰した（図A）．ヤング率とε_SLおよびε_PSSの間には有意な相関関係が得られた（ε_SL; r = 0.63, p = 0.002, ε_PSS; r = 0.66, p ＜ 0.001）（図B）．
【結語】
虚血領域に出現するSLとPSSは硬い心筋では減弱した．このような微細運動を評価することで，虚血心筋の組織性状が推定できる可能性が示唆された．