Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 循環器
循環器 その他

(S635)

高齢者特有の姿勢である脊柱後彎変形がS字状中隔に及ぼす影響についての検討

Associations between sigmoid septum and thoracic kyphosis in elderly populations

小林 淳, 及川 雅啓, 國井 浩行, 中里 和彦, 鈴木 均, 竹石 恭知

Atsushi KOBAYASHI, Masayoshi OIKAWA, Hiroyuki KUNII, Kazuhiko NAKAZATO, Hitoshi SUZUKI, Yasuchika TAKEISHI

福島県立医科大学循環器内科学講座

Department of Cardiovascular medicine, Fukushima Medical University

キーワード :

【背景】
S字状中隔は,高齢者に認められる形態的な変化で,左室流出路の中隔基部の壁肥厚を特徴とする.S字状中隔のメカニズムやその病態については明らかでない部分が多い.一方,脊柱後彎変形は,いわゆる「円背」と言われるものであるが,加齢に伴い進行する高齢者特有の姿勢である.S字状中隔と脊柱後彎変形は高齢者に認められるものであるが,その関係性は明らかとなっていない.
【目的】
今回我々は,高齢者において,S字状中隔と脊柱後彎変形の関連性について検討した.
【方法】
対象は60歳以上の高齢者で,体表面心エコー図検査と胸部X線側面像を同時期に施行した193名とした.S字状中隔は胸骨左縁長軸像の拡張末期において,中隔基部壁厚が13mm以上,かつ中隔基部壁厚と中隔中部壁厚の比が1.5以上と定義した.また上行大動脈と中隔壁のなす角度を収縮末期,拡張末期に計測しそれぞれ中隔大動脈角S,中隔大動脈角Dとした.脊柱後彎の程度は,側彎症にて測定するcobb法を応用し,胸部X線側面像にて第3胸椎上縁と第11胸椎下縁を各々延長し両者のなす角を 後彎角と定義した.対象をS字状中隔を有するsigmoid群(n=70),S字状中隔を有しないnon-sigmoid群(n=123)とし,2群間における中隔大動脈角,後彎角を比較検討した.
【結果】
対象の年齢は77.2±7.6歳.男性100名,女性93名.sigmoid群ではnon-sigmoid群と比較して,中隔と上行大動脈のなす角度は拡張期,収縮期共に急峻あった(中隔大動脈角D 108.6±10.9 vs 117.1±9.1, P<0.01,中隔大動脈角S 116.9±9.7 vs 120.4±8.8, P<0.01).後彎角との関係性については,sigmoid群ではnon-sigmoid群と比較して,明らかに後彎角の拡大が認められた(47.2±8.7° vs.32.7±10.1°, P<0.01).ROC解析では,高齢者におけるS字状中隔を脊柱後彎の程度により検出する後彎角の閾値は39.7°(AUC 0.85)で,感度80.6%,特異度76.2%であった.
【結語】
高齢者において,脊柱後彎は,S字状中隔の出現のメカニズムに関与している可能性があることが示唆された.